夫婦生活が長くなると、時々、相手の兄弟などから“頼まれ事”を受けることがある。或る新聞記事によれば、先日亡くなった女優・樹木希林氏は夫である内田裕也氏の実姉から頼まれ事をされていたらしい。その頼まれ事とは「もし、先に死ぬときは裕也の首を絞めて死んで行ってよ」という恐ろしい話だ。もちろん、冗談なのだろうが、それくらい齢をとっても“我が弟”の素行を心配していたらしい。同時に、それくらい樹木希林氏の“手綱さばき”を信頼してもいたのだろう。もっとも、この夫婦は40年以上“別居婚”で一緒に暮らしているわけではなかった。だから実際には“手綱さばき”といっても、年に一度会うか会わないかの関係の中では無いに等しい。それでも、どこかで“二人は繋がっているのだ”と、実姉らしい本能的な感覚で頼んでいたのに違いない。近年、樹木氏は、全身がんで“夫の面倒をみれる”ような状態ではなかった。それでも“役者魂”で仕事だけは死の直前まで辞めなかった。一方の内田裕也氏も、昔のような破天荒さは影を潜め、大人しくなったが“ロック魂”は継続していて年末恒例のロックフェスティバルには出演したいと頑張っている。但し、高齢で足腰が弱り、現在は“車いす生活”である。妻である樹木希林氏の葬式には参加したが、常に支えを必要とし、一人では歩くことも出来ないようである。ショックが大きいということでマスコミへのコメントもなかった。昨年の夏、転倒して骨折するなど、もう身体はボロボロなのだ。奇妙なもので、夫婦ともにここ何年か急速に衰えていた。たまたま今年7月、フジテレビで内田裕也氏の特集番組を放映したが、そのナレーションを担当したのは樹木希林氏であった。まるで夫婦としての“最期の役目”であるかのように、それを引き受けた。さて、樹木希林氏は逝ったが、義姉との約束である「首絞めて」を実行するだろうか。少なくとも、ロックフェスティバルが終わるまでは実行しないだろう。それ以降に関してはわからない。今年、4月、女優の朝丘雪路氏が亡くなり、その4か月後、その夫で俳優の津川雅彦氏が亡くなった。時々、そういう現象が起こる。「首絞めて…」と頼むのは、考えものなのかもしれない。
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