新日本プロレスのエース・棚橋弘至氏が主演する映画であることは知っていた。その内容も、棚橋選手が“悪役レスラー”として登場する映画だということも知っていた。ただ、その原作が人気絵本の『パパのしごとはわるものです』だったとは知らなかった。映画の方では『パパはわるものチャンピオン』のタイトルで昨日、初日の舞台挨拶が行われた。もちろん、主演した棚橋弘至氏も登壇し「こんなに大きな劇場で、多くの皆さんの前であいさつできると思っていなかったのでうれしい」と語り、映画スタッフから手紙や寄せ書きを贈られ涙していた。この映画は、いろいろな意味で価値がある。まずプロレスが題材の物語であるが、実際のプロレスラー、しかも新日本プロレスのエースが主演していること。通常、こういう設定だと、誰か“覆面レスラー”に“悪役の覆面レスラー役”を依頼しそうなものである。その方が、本来は自然なのだ。実際、新日本には何人かの覆面悪役レスラーもいる。ところが、そうではなくて“正義の味方”ともいうべき棚橋弘至氏に“悪役”を依頼した。そして棚橋選手も、それを快諾した。その経緯については知らないが、選抜した方も、それを受け入れた方も、両方とも素晴らしい。昨今、スポーツ界では“正義”が“悪”を裁く構図が多い。この映画では「パパはわるもの」なのだ。多分、“悪者”になった棚橋選手は、日頃、誰よりも“悪者”と闘っている。悪者レスラーの覆面は剥ぎ取らないが、剥ぎ取らなくても、その中に“どんなパパ”がいるのかを知っている。だから“悪者”を演じることに躊躇がなかったに違いない。そして、今の子供たちは、どういう仕事であれ“悪者を演じる”父親を理解しようとする。ぼんやりだが“正義の味方”だけが仕事ではないことを感じ始めている。だから『パパのしごとはわるものです』という絵本が人気となったのだろう。私は幼い頃、漫画で“般若の仮面”を着けられてしまうと、もう“悪者”としてしか生きられないストーリーに何故か興奮した。子供たちは、自分の中にも“わるもの”がいることを気付いているのだ。
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