今月26日から21年ぶりに全国ツアーを行っている歌手がいる。50歳直前の森高千里氏だ。大昔、人形のような“美しい肢”と“鼻にかかった甘い声”で一世を風靡した歌手だ。超ミニスカート姿で「私がオバさんになっても」という歌を歌った。その歌詞の中には「ミニスカートはとてもムリよ 若い子には負けるわ」という一節がある。あの頃、誰もが彼女自身の作詞であるこの歌の内容は、そのまま現実のものとなるだろうと予感した。しばらくして彼女は結婚をした。そうして、いつの間にか3人もの子供の母親となっていた。文字通り「オバさん」になったのだ。ところが、その後になってCM等で復活している内に、再び歌手として歌うようにもなった。ファンの要望に応えるかのようにミニスカートでステージに立ったのだ。今回のツアーでは、あのころに比べれば若干短さは不足しているが、キラキラのミニスカート姿で50歳を過ぎてもステージに立つことを約束した。この人はデビュー当時から、自分に何が望まれているのかを知っていた。自らが作詞した歌の中に「のぞかないで」という歌がある。私は、この歌を初めて有線で聴いた時、鼻にかかった甘い声で、こういう歌詞を自ら書き、そして自ら歌えることに心底驚いたものだ。ちょっと突き放したように「のぞかないでよ ドスケベ それじゃチカンと同じよ (中略) のぞかせないわ意地でも」このような今なら“炎上”しそうな内容を、自ら歌詞にして歌ったのだ。おそらく、その頃にファンだった人たちが今回のツアーでは大挙押し寄せることだろう。沢田研二氏がアイドル時代とは“大きく変貌した姿”でステージに立つのとは大違いである。もちろん、人は誰でも齢を採る。そして、嫌でも容貌は変化していく。けれども、本当のアイドルとは、あの頃の記憶や感覚を“呼び戻してくれる人”なのだ。決して現在の“姿”を求めているわけではない。或る意味で「新曲」など不要なのだ。あの頃のあの歌。あの頃の“あの姿”こそ、多少は崩れていても、その当時のファンたちが酔いしれたい本当のスターの姿なのだ。
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