節分に行う「鬼退治」の方法にもいろいろなものがある。通常は「豆撒き」だが、そんなもので本当に「鬼」は“退散”してくれるだろうか。誰でも心配になる? そこで登場するのが、平安時代から続く「焼嗅がし神事(やいかがししんじ)」によって霊験を得た「イワシの頭をヒイラギの枝で刺した御守り」である。これさえあれば100人力(⁉)かどうかは知らないが、ともかく広島の住吉神社では毎年、節分の日に巫女たちによって執り行われている神事であることは確かだ。どういう風に行うのかというと、まず巫女たちが1000匹のイワシの頭だけを黒焦げになるまで焼く。そして、その“臭気”を神社内にまき散らすために畳一畳分の“大きなウチワ”で扇ぎ続ける。実はここだけの話だが「赤鬼」というのはイワシの臭いが嫌いなのだそうだ。さらに、もう一つ、赤鬼の嫌いなものがあって、柊(ヒイラギ)の棘(トゲ)なのだそうだ。そこで、イワシの頭が焼きあがったなら、それをヒイラギの枝で刺した御守りを参拝者たちに分けてくださる。何んとも“ありがたい神社”なのだ。それを家に持って帰って、戸口のところにぶら下げておく。そうすると「赤鬼」は家の中には入れないというわけだ。メデタシ。メデタシ。これが平安時代から続く“正規の鬼退治?”らしい。だから「イワシの頭も信心から」という諺もある。おそらく、大昔はすべての神社が執り行っていた神事のような気がする。少なくとも、各家の戸口に、焼いたイワシの頭をヒイラギの枝で刺して吊るしておくと「赤鬼は戸口から入れない」という迷信は100%存在した。だから、あの諺が現代まで生き残ったのだ。ところで、多くの人は“同じようなニュアンス”で節分に「恵方巻」を食べる。けれども本当は今年のような「土→己」の年というのは、恵方巻の効果がない。どうしてかというと、元々“五行の土”には“仮の方位”しか与えられていないからだ。実際には「中央」というのが「土」の方位で、だから「恵方」そのものが本当は存在していない。今年も大量の恵方巻が破棄されたが、そういう意味では「イワシの頭」と五十歩百歩なのだ。但し、私はこの伝承の「赤鬼」という部分に注目する。単なる「鬼」ではなく「赤鬼」と指定しているのは、元々そう感じさせる何らかの“存在”が出現していたことの名残なのではないだろうか。そうだとすれば“異世界の者”が嫌がりそうな“臭い”を戸口にぶら下げるのは、侵入を防ぐ意味からは効果的なのかもしれない。特に若い女性の一人暮らしで「赤鬼」を寄せ付けたくなければ、イワシの頭は超おすすめ品かも…。
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