科学者の中には人間の“心理”というものに疎い人が時々いる。せっかくの「法話」なのに、その法話が少しも心に響かず、耳にも残らないとすれば、残念な結果としか言いようがない。アンドロイド観音「マインダー」の話だ。秀吉の正室ねねがゆかりの寺として知られる京都・高台寺の“教化ホール”に3月8日~5月6日まで世界初のアンドロイド観音が設置される。これは高台寺と大阪大との共同制作により誕生したアンドロイド観音で、昨日その“開眼法要”が行われた。これは元々高台寺の執事長である後藤典生氏と世界的なロボット研究者である大阪大の石黒浩教授とが旧知の間柄だったから誕生した作品で「現代人に仏様を何とか近づけられないものか」という話の中から生まれた共同研究の成果であるらしい。ロボットから法話が流れてくれば、確かに興味深い。動かないロボットではなく、身振り手振りを加えて“生きているかのような”雰囲気を加えることで、観音様らしく思えるのではないか。そういう試行錯誤の末に誕生したのが「マインダー」と名付けられたアンドロイド観音であった。だから本当は称賛してやりたいのだが、どうしても出来ない。なぜかというと、この「観音様」頭部と手指は確かに“仏様っぽい”のだが、それ以外の部分、つまり胴体部分がなぜか透明になっていて、あからさまな“機械の繋ぎ合わせ”剥き出しなのである。したがって逆に顔や手だけが“人形的”に作られているので、違和感というか異様な外見だけが眼に飛び込んでくる。とてもじゃないが「観音様」になど見えない。文字通り、実験室の“機械仕掛け”にしか思えないのだ。これではどんなに優れた説法でも法話でも耳に入らない。あまりにも異様な外観なので、そちらの方に気を取られて、法話に心を向けるということが出来ない。とても有り難い説法や法話を聴いたという気持ちになどなれない。そもそも、どうして“胴体を剥き出し”にしようとなどしたのだろう。ロボットそのものに興味を持ってほしかったのだろうか。だが土台がロボットにだけ興味を持つような人は“観音様”になど興味を持たない。観音様に妙味を持つ人は、本当は“ロボット”になど興味を持たない。どっちを優先させれば良いのかと言えば、お寺に置く以上は“観音様”の方である。大学の研究室なら“剥き出し”で良いのだ。そういうわけで、外国人が悦びそうな“観音様”だが、少なくとも日本人の心には響かないと知っておいて欲しい。
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