今年2月に仲間数人とノルウェーからフィリピンへ旅行に来ていた24歳の女性がいた。冒険好きな彼女たちはフィリピンをオートバイでツーリングしていた。爽快にオートバイで飛ばしていたビルギッタ・カレスタッドさんは道端で動けなくなっている子犬を見つけた。道脇にバイクを止めて、しばらく観察していたが、仲間から促され、その子犬を抱き上げてオートバイの籠の中に入れ、滞在先であったリゾート施設へと連れ帰った。普段、看護師をしていて病気の世話をすることに慣れている彼女は、動けなくなっている子犬を見捨てられなかったのだ。さいわい、子犬は徐々に元気になった。彼女は「旅先の外国で“小さな命”を救えた」ことを悦んだ。そうして子犬と一緒に広い施設の庭先で遊んだ。その時、興奮し過ぎたのか、子犬は彼女の指先を噛んだ。一瞬、不安がよぎったが、大事には考えなかった。看護師である彼女は自分で素早く手当てしたのだ。こうして彼女はノルウェーへと戻った。ところが、それからしばらくして彼女に異変が訪れた。病院で検査を受けると「狂犬病」を発症していることを告げられた。あの時の子犬からであることは明らかだった。目の前が暗くなった。なぜ、あの時、仲間達から「早く行こうよ」と促されたあの時、子犬を見捨てて走り去れなかったのか。自分が“助けた子犬”が、皮肉にも自分の命を奪おうとしている。涙が留めなく流れたが、もう遅かった。こうして彼女は仲間達に見守られながら、5月6日に亡くなったのだ。人は“旅先”でいろいろなことに出遭う。予期せぬ出来事に出遭った時、どう行動するかはさまざまだ。誰も彼女の“やさしさ”を責められない。旅先での“ちょっとした気持ち”が人生を変えていくことは稀ではない。日本では「狂犬病」はほとんど発症しない。けれども、今も海外では数多くの人が狂犬病に掛かり、そして亡くなっている。年間、6万人近くもの人が「狂犬病」により亡くなっているのだ。どうして神は、彼女の「親切心」に“待った”をかけなかったのだろう。
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