私が「こいつはスゴイ‼」と驚いたのは、まだ世間的には「ビートたけし」の名が浸透していない頃であった。何気なく見た番組で吉田拓郎氏がゲストとして呼んだのがTVに出始めたばかりのビートたけし氏であった。それは完全にTVの枠を超えていて、吉田拓郎氏が笑い転げていたのを覚えている。実際、TVとか番組とかいうことを完全に無視してボケまくる彼を私も素晴らしいと思った。それまでにはいない“笑いのツボ”を押さえている。台本もないのにテンポが速く、ナチュラルな笑いにもっていく。彼以降もいろいろな“お笑い芸人”が世に出たが、あの当時の「ビートたけし」ほどの“瞬間芸”には達していない。ただ彼が“活きていた”のは、交通事故に遭うまでであって、それ以降の「ビートたけし」には“笑いの神様”が抜け落ちてしまっていた。ハッキリ言うと、もはや“普通の人”以外の何物でもなかった。そういう彼にTV業界が縋りついてきたことは“過去に縋りついている”以外の何物でもなかった。おそらく、そんなことは彼自身も気付いていて、だからこそ「映画」制作に夢中になったに違いない。そうすることで「自分は死んでいない」ということを世に訴えたかったのだ。実際、そのお陰で彼は海外で評価されることになる。映画監督「北野武」として“生まれ変わった”のだ。女性関係もころころ変わった。1980年に幹子夫人と結婚したが、相性が良くなかったのか、一緒に暮らした期間は短かったようだ。広く知られているのはグラビアアイドルとして活躍した細川ふみえ氏との関係だ。交通事故で二人の関係が壊れて、細川ふみえ氏の運命も変わった。すぐに芸能界を辞めてしまえば、幸せな結婚が出来た可能性もある。2014年に週刊誌がスクープしたのは全然別の女性、新たな愛人ともいうべきビジネスウーマンだった。週刊誌の見出しには「100億円の愛人」の文字が躍った。それからすぐに「T.Nゴン」という奇妙な名前の新事務所を立ち上げる。そして2018年には自分が設立した「オフィス北野」からも撤退する。さらに今年5月、これまでの全財産を放棄することで正式に幹子夫人との離婚も成立したらしい。人によって、ビートたけし=北野武氏の“生き方”はさまざまに捉えられることだろう。長年連れ添った妻との“正式離婚”を望んだのは、先に亡くなった内田裕也&樹木希林夫妻とは真逆の生き方である。どちらが「正しい」とか「幸運」と一概には言えない。ただビートたけし氏は“過去の栄光”を捨てたかったのかもしれない。「過去は幻」として「今」を択んだのだ。
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