今年9月に池袋のホテルで死体で発見された36歳の女性は、容疑者として逮捕された私大生に“殺人を依頼”していたことが初公判で明らかとなった。被害者とは初対面であったのに、容疑者は「嘱託殺人罪」という珍しい罪状で起訴された。つまり“依頼を受けて殺した罪”である。よく家族が「もう死にたい」という病人に頼まれ、その願いを受け入れる形で“殺した”場合に適用される。そういう罪状だ。したがって少なくとも検察側は、この事件に対して容疑者が何らかの目的で被害者を強引に殺したのではなく、依頼を受け入れる形で“殺しを実行した”と見ているのだ。おそらく、ツイッターで知り合っている二人には交信の記録が残っていて、それが決定的な決め手になったと思われる。容疑者の供述では、ツイッターによって“自殺志願者”何人かとやり取りしていて、志願者たちを数人殺してから、自らも死のうと決めていたらしい。つまり自らも“自殺志願者”だったというのだ。どうしてかというと、教員採用試験に失敗したからだ。言ってみれば、それだけのことでだ。おそらく、彼に殺人を依頼した36歳の女性も、客観的にみれば決して切羽詰まったような状態だったわけではない。なぜなら、彼女は母親に対して「病院に行ってくる」と言って家を出ているからだ。36歳だが無職で実家暮らしであった。切羽詰まってはいないが、将来に対して「希望を見出せない」状態ではあったに違いない。人間は、将来に希望を見出せなくなると、生きていること自体が“辛く”なる。逆に「希望」があれば、どんな過酷な状況でも、悲惨な状況でも、生きていくことが出来る。街が徹底的に破壊された戦時下においても、子供達の目は輝いている。未来の「希望」を見つめているからだ。けれども希望は、誰かが与えてくれるものではない。自らが“見つけ出して”いくものなのだ。その“希望の光”は、どんなにへとへとになっても、ボロボロになっても、ズタズタになっても、這いずり回ってでも見つけ出す方が勝ちなのだ。けれども、現代はあまりにも早くから人生を放棄してしまう人が多い。ちょっとしたことでも深いダメージを受けて、そこから立ち上がろうという気力を持たない人が多い。「希望」だけは、周りの人も家族でも与えることが出来ない。そして「希望」だけが、人生と未来を輝かせるのだ。
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