近年、世間的に“さまざまな生き方”や“さまざまな職業”が公認され、それに伴うような形で「好きな仕事」を認めるような風潮が多くなった。実際、世間的にはあまり“馴染みのないような仕事”でも高収入を得ている人たちも多くなった。ところが現実には“そういう仕事”だけで“暮らし”が成り立っている人は必ずしも多いとは言えない。そういう仕事の一つに「漫画家」という職業がある。ある調査では日本に「漫画家」を名乗る人は一万人余りいるらしい。けれども実際に漫画だけで“生計”が成り立っているのは、そのうちの十分の一くらい、つまり千人足らず…ということらしい。確かに、世の中に“漫画”を描くのが上手い人はたくさんいて、そのうちの何人がプロ漫画家としてやっていけるのか、漫画雑誌はたくさんあれども、その中で“売れていく人”はそうそう居るものではない。しかも、長期にわたって“売れていく人”は少ない。1990年に「シロと歩けば」で漫画家デビューし、その後「ロダンのココロ」というほのぼのとした漫画を連載していた内田かずひろ氏(56歳)が昨年、仕事が減って家賃が払えなくなり、一時的にホームレスになっていたという。その後は友人や救済団体などの助けで“個室シェルター”を与えられたという。漫画家のような“個人事業主”は、公的な給付金を受けることがなかなかに難しい。元々が“保障されている仕事”ではないからだ。前年との対比と言っても、元々が“対比しにくい”仕事が多く、金額的にも判然としない。彼の場合、役所に相談に行っても、日雇いの肉体労働を探すようアドバイスされたらしい。これは、あまりにも“酷”な要求で、今までペンで生きてきた人に、スコップやツルハシを持てと言っても土台が無理なのだ。ドイツだったか、フリーランスの技能者たちには書類審査なしに“共通一時金”を支給していたようだ。申告書を視れば、前年度、何で働いていたかは解かるのだから、そういう角度から一律に“共通一時金”を渡すような仕組みを作るべきである。そうでないと、今のように“だらだらの自粛生活”が続くと、困窮するフリーランスの人達が次々と出てくる。
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