私は子供の頃に聴いた話でもっとも忘れられないのは「命のろうそく」の話だ。つまり、誰でも生まれてくるときに「命のろうそく」に火が点され、そのろうそくが“消えてしまう”まで「現世」で生き続けるようになっている……という話だ。ところが、たまに、そのろうそくが「入れ替えられる」ことがあるという。つまり、短かったろうそくと、まだ長かったろうそくとが、何かの理由から“入れ替えられ”しまうのだという。そういう何とも奇妙で怖い話だった。例えば手相で「生命線は寿命を表す」という“俗説”がある。確かに多くの長寿者たちの手相を見ると、生命線がクッキリと長いケースが多い。けれども、生命線が長くてクッキリとしていても、若くして亡くなってしまう人達も稀ではない。だから、生命線だけで寿命は論じられない。ただ相対的に生命線がクッキリ長くて乱れも切れ目もない人達の方が、健康的な生活を送っている…ことだけは間違いがない。そういう意味では“生命力の反映”として視れないことはない。さて、歌手の松山千春氏がラジオの中で自分の弟が「19日にがんで亡くなった」と語ったらしい。松山氏自身は今年65歳で、弟は61歳であったようだ。彼の場合、自分の父親や姉は早くに亡くなっていて、母親も今年の正月に99歳で老衰死している。したがって、すべての“親姉弟”を喪ったことになる。人間、ある程度の年齢になれば、親兄弟の「死」は避けて通れない。けれども現代では60代や70代だの死は「やや早い」と感じるようになった。寿命には、誰もが何となく感じている「真実」というものがある。家系的に“早死型”の家系・血統と、家系的に“長生き型”の家系・血統とが存在することだ。これは親戚も含めて考えるべき“傾向”で、別に“科学的根拠”があって言っているわけではない。けれども、確かに“短命の家系”と“長命の家系”があることだけは事実で、その“死因”にも“何らかの関連性”あるケースが驚くほど多い。そうすると、どこかで「命のろうそく」の物語は“何かしらの真実”を反映した物語のように思えてくる。私は十代半ばの頃、自殺未遂をした。私など生きていても「世の中に役立つようなことはないだろう」と思ったからだ。それ以外にも、何かの理由があったのだが、忘れてしまった。要するに、いま考えれば“自ら命を絶つ”ような問題ではなかったような気がするのだが、精神的に幼かった私は「もうダメだ」という気持ちでいっぱいだった。ところが、私は死ななかった。というか死ねなかった。だから今こうして生きていて、毎日、こうして“偉そうなこと”を書いたりしている。きっと、私の「命のろうそく」は“十代半ば”では消えないように出来ていたのだ。
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