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今日の迷言・余言・禁言

未来と運命に対するヒントがいっぱい


「あなたの燃える左手で」という興味深い作品


最近の私は滅多に小説を読まない。だから新しい小説家も、新しい文学作品も、あまり知らない。ときどき何かの文学賞の受賞作で、そのタイトルが記されるが、あまり惹かれるものは出て来ない。そういう中で、きのう何気なく「泉鏡花文学賞」の受賞作のタイトルを見て、妙に惹かれた。それが朝比奈秋著『あなたの燃える左手で』という作品名だ。女性かと思ったが、著者は男性らしい。まだ42歳の比較的若い作家だ。それも現役の医師との“二刀流”であるらしい。そのことも興味をそそった。医師との二刀流としては渡辺淳一氏がそうだった。彼も“興味深いタイトル”で書く作家で、わたしは『阿寒に果つ』というタイトルに惹かれて最初に読んだ。多少、自伝的要素のある作品で、自らが通った高校時代の同級生で「天才少女画家」として知られていた少女の、短い生涯の生きざまを描いた作品だった。真冬の阿寒の“白い雪”に包まれて亡くなっていこうとする少女に近づこうとして近づけない、もどかしさのようなものが伝わって来る……そういう作品だった。さて新進の二刀流・朝比奈氏の『あなたの燃える左手で』の方だが、こちらの方は、麻酔から覚めると見知らぬ他人の手が、それも白人の手が“移植されていた”という状況から物語がスタートする。現役の医師が、海外において、外国人の手を移植されてしまった日本人という設定で執筆をした興味深い小説だ。彼は別に小説家を目指していた人物ではなく、たまたま論文を書いていて、急に構想が浮かび書きたくなって執筆したら賞を取り、その後も浮かび上がってくる材料を次々と執筆していたら、いつの間にか本物の小説家になっていった、という珍しい履歴の持ち主だ。そうでなければ、こういうタイトルは付けないような気がする。タイトルだけからすれば官能小説でも行けそうな気がする。昔、なかにし礼氏の作詞に「燃える手」というのがあった。ろうそくにかざした私の手が「燃えている間だけでいい……わたしの傍にいて…」と願う切ない愛情をうたった詞だ。文学のタイトルには、タイトルだけで魅力的なものがしばしば出現する。
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