息子の誕生日にピエロの格好をした人物が“花束”を届けてくれたなら、当然、玄関を開け、それを受取ろうとするだろう。室内では息子の友人たちも来ていて、楽しくパーティーが開かれていたのだから…。疑う気持ちなど微塵もなかったに違いない。ピエロは花束と同時に大きな風船まで差し出した。笑顔でそれを受け取りながら、誰からのプレゼントなのか尋ねようとしたその矢先、両手がふさがった彼女の目の前に、黙ったまま銃口が差し向けられた。最初、彼女は“冗談?”なのかと思った。ピエロ姿で花束を届けてくれた人物から銃口を向けられて、何が何だか解からなくなったのだ。ピエロは最後まで言葉を発しなかった。黙ったまま彼女の顔面目掛けて銃の引き金を引いた。鈍い音がし、顔面から血を流し、彼女は倒れ込んだ。パーティーの部屋には、銃弾が聞こえたはずだが、騒いでいたせいか誰も出てこなかった。ピエロは黙ったまま玄関から車に引き返して、静かに走り去っていった。これが1990年にフロリダ州で起きた事件のあらましである。早い段階で一人の容疑者が浮上したが、証拠がなかった。こうして事件から27年が経った。ところが、2014年になって、この地区の保安官事務所は“未解決事件”の再捜査に乗り出した。そしてついに事件当時にはまだ採用されていなかったDNA検査で容疑者の証拠をつかんだ。容疑者は1300キロも離れたバージニア州に居た。その容疑者の女を逮捕したとき、彼女は車の中で一人の男性と一緒だった。その男性とは、容疑者が殺した女性の夫だった人物である。事件から12年後に、二人は“結婚”していたのだ。実は、この事件が起きる12年前にもアメリカでは「ピエロ殺人」の人物が逮捕され全米を震撼させた。その人物ジョン・ウェイン・ゲイシ―は、街の有力者で慈善事業にも積極的な人物だった。その一方で、33人の少年を暴行して殺害、自分の所有している土地に次々と埋めていたのだ。何かの調査で、サイコ殺人を起こす可能性の低い職業として「慈善事業家」が掲げられていたが、彼の場合には全米を代表するような「ピエロ慈善家」だった。
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