芸能・芸術の世界では時々、本人も予想しなかったような“奇跡”が起きることがある。「機動戦士ガンダム40周年のメモリアルに、こんな奇跡が起こるなんて!」と驚きと喜びを隠せないのが歌手・森口博子氏である。何しろ、オリコンの週間アルバムランキングで彼女の「GUNDAM SONG COVERS」が“自己最高の3位”となって、28年ぶりの“トップ10”入りを果たしたのだ。これは女性アーティストのインターバル記録も大きく更新したらしい。或る程度の年齢の人であれば「森口博子」の名前は知っている。けれども、それは“歌手”としてよりも、どちらかと言えば“タレント”や“バラドル”としてであって、歌手であることは知っていても何を歌った歌手なのか…という点になると答えに窮する。実はこの人、最初からガンダムを歌っていたのだ。1985年17歳でデビューしているが、そのデビュー曲がガンダムの後期オープニングテーマ曲「水の星へ愛をこめて」だった。そして、この曲はオリコン16位まで行った。ところが、その後はヒットに恵まれなかった。私の記憶でも、歌唱力はそこそこあるのだが、個性というかインパクトが乏しく、歌手として大ヒットは難しい印象を受けた。けれども“バラドル”としてあちこちの番組に出ていたので、そういう意味ではタレントとしての存在感は失われていなかった。そして、もう一つ、この人はデビュー以来、あまり“見た目”も“性質”も“雰囲気”も変わらない。そういう意味では「森口博子」は多くの人達に“同じ印象”で記憶にとどめた。この同じ印象で記憶にとどめたことが、今回の快挙につながったのだと私は思う。つまり、今回のアルバムは「誰が買ったのか」ということである。もちろん、一番の購入者は残念ながら“彼女のファン”ではなくて、“ガンダムのファン”だと私は思うのだ。けれども、それはそのまま“彼女の応援者”でもある。なぜなら彼女こそガンダムの後期オープニングテーマ曲を歌ってデビューした歌手であり、GUNDAM=森口博子という形で記憶に残されているからだ。しかも、そのファン層は徐々にすそ野を広げている。さらに彼女の元々のファンたちがいる。この人のファンには男性より女性の方が若干多いような気がする。そして、同年代だと大体50歳前後に達していて、その子供の成長期に一緒にガンダムを見て、一緒にガンダムのテーマ曲を聴いていた人たちだ。多分、熱狂的にアイドルとして応援するというよりも“同じ時代を生きた歌手”として「共感」のエールを送ってくれる人たちなのだ。この「共感」という評価は、こういう“物語のテーマ曲”というのが一番得られやすい。或る種の“一体感”を物語そのものが演出してくれる。「エヴァンゲリオン」などでもそうだが、テーマ曲と物語が繋がっている場合、黙っていても歌はヒットする。そして、人々はそれを聴きながら“わが青春”に戻れるのだ。
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