中華圏に続いている“奇妙な風習”を初めて知った。“死後の花嫁”を求める「冥婚」という儀式だ。地域によって「幽婚」とも「鬼婚」とも呼ばれるらしい。とにかく未婚のまま亡くなった男性に“死後世界用の伴侶”を授けようとするのが本来の目的であった。主として一家の“働き頭”でありながら、若くして事故で亡くなった男性に施すのが3000年前から脈々と続く風習らしい。最初それは“幽玄なる儀式”として、真摯に執り行われてきた。本人の遺影が飾られた室内で、本人の棺の中に、死後世界で“花嫁となるべき女性の遺骨・遺体”を静かに納める。そうすることで本人の魂は鎮まり、身内に対して“祟る”ことがない。これが重要なのだ。だから「冥婚」は“死者への儀礼”として重要なものとされ、今日まで密かに続いてきた。もっとも、亡くなった本人にふさわしい“死後の花嫁”を見つけ出すのは実際のところ難しい。もちろん、同じころに亡くなった“少女の遺体”や“若い女性の遺体”が必要なのだが、今日ではそれを見つけ出すのは容易ではない。そこで、どうするか。殺人が行われるようになったのだ。そして、それが実際に行われ、実に日本円で100万円前後の価格で売買されるという“信じがたい闇取引”が、現代でも行われているというのだ。今年の4月、中国・陜西省で「冥婚」目的から殺害した遺体2体を運んでいた車が発覚し、容疑者が逮捕された。本来は、荘厳な“死者への儀礼”として執り行われてきた風習だが、実際のところ中国では、以前から産まれてくる男女の比率が“合わない”ことが指摘されてきた。事故で早死しなくても“死後の花嫁”を必要とする男性が多くなってきている。世界的に“未婚率”が高くなってきている今日「冥婚」という“奇妙な風習”は、けれどただ単に“奇妙な風習”では片づけられない“課題”をわれわれに投げかけているような気がする。
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