大変大きな爆発音がしたらしいのだが、私はその音を聴いていない。昨夜、札幌の豊平区「平岸」で雑居ビルが爆発し、四十数名の負傷者が出た。幸い死者は出ていない。雑居ビルと言っても三階建てで、階数の低いビルだったから、飛び降りた人が多数いたが雪道がクッションになったせいもあり、骨折程度で済んでいるらしい。「平岸」という地区名は、私がここに来る前に居た場所で、そういう意味では身近な区域だ。地下鉄「平岸駅」付近の8階建てマンションに暮らしていたので、あの付近に飲食店街などあっただろうかと不思議に思った。地図で検索してみると、私が暮らしたマンションとは道路一つ隔てているが歩いても3分とはかからない。あの付近、というか平岸全域だが、私は今から15年ほど前にはよく歩いたものだ。早朝にも歩いたし、夕方にも歩いた。なぜ歩き回っていたのか、今となっては理由がよく解からない。何か理由があったはずなのだが、それが何であったのか、思い出せない。最近、そういうことが多い。豊平区から中央区へと変わった時、私は何故か、もうあのマンションの部屋には近寄りたくない、と強く思ったものだ。何がそんなに厭だったのか、それすらも今は判然としていない。ところが、あれからもう十年以上が経って、今は「平岸」という地名を耳にしただけで懐かしさだけがこみあげてくる。何の“嫌悪”も“嫌な思い出”もない。ただ忘れてしまっただけなのかもしれないが、すぐ思い出せるのは夕陽を見ながら歩いた懐かしい想い出だけである。特別、自然の美しい風景でも、きらびやかな街並みでもない。それなのに、妙に懐かしい。もっと活き活きとして、何かを追いかけているような“老いなど感じたことのない”自分が居た。今が不幸せなわけではない。何かを失ってしまったというわけでもない。単純に比較は出来ないが、こちらに来てからの方が、さまざまな点で恵まれている。新たな占いコンテンツが出来、新たな著書も何冊か出て、海外にもいろいろと出掛け、表面上ではそれなりに満たされてきた。なのに、この“寂寞感”は何なのだろう。妻が病気となったからであろうか。確かに、それもある。けれども、そうではない。あの頃の私には「若さ」があった。何にも代えがたい「若さ」があった。もしかすると、私は、あの頃の“必死に何かを追い求めていた魂”を呼び戻したいのかもしれない。
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