何事にも“始まり”があれば“終わり”もある。人は“誕生”して人間としての生命が始まり、“死亡”することで終わりを迎える。個々の社会的役割は、その仕事に就いた時から始まり、その仕事を辞める時に終える。アーティスト・安室奈美恵氏は1992年9月16日に“デビュー”したらしい。そして、少し中途半端なのだが2018年9月16日をもって“引退”するという。つまり“26年間”で“閉幕”という形。CMも抱えている彼女は、辞めたくなったからと言って、すぐは出来ない。だから、少し中途半端な年数となってしまうが、自らが“40歳の誕生日”に「ブログ」を通じて公表したのだろう。なぜ、辞めるのかについては公表しない。それが彼女の「美学」だからだ。人の“生き方”にはいろいろあって、最近はアーティストでも“私生活”を前面に出す人が多くなった。その方が親近感を持たれやすく、心情的な応援を受ける場合も多い。けれども、それは同時にプライベートを“干渉される”生き方でもある。近年は、自分に都合の良い時だけプライベートを見せ、都合が悪くなると見せまいとする芸能人が多すぎる。“さらす”のか“さらさない”のか、どっちつかずはアンフェアである。そういう意味で、安室奈美恵氏は、社会生活と私生活を明確に分離し、仕事も辞めて“公私とも見せない”と決めたのであろう。そうすればプライベートは誰にも干渉されることがない。実際、そういう形で“仕事の第一線”から遠ざかった人たちは多い。“最高の時”に辞めることで、あらゆる面での「美しさ」を保つこともできる。記憶は“永遠”に残る。しかし、その“逆の生き方”もある。その典型は「美の巨人」であった彫刻家・ミケランジェロだ。彼は当時としては大変長命だったが、死の直前まで新たな作品の制作を辞めなかった。晩年のミケランジェロの作品は、とても「ダビデ」や「ピエタ」を制作した人物とは思えないほど力量が衰えていた。それでも、しがみつくように「ロンダニーニのピエタ」を作り続けた。けれども、その最晩年の“崩れ落ちるような彫像”こそ、人間の“生きる苦悩”を表わす最高の作品に私には思える。
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