人はときどき意図せずして“そのこと”を知る。そのことを知って、改めて“その人”に尊敬の念を抱くということがある。漫画『ベルサイユのばら』などの代表作を持つ漫画家・池田理代子氏がオペラのソプラノ歌手として舞台に立っているということは何かで知っていた。けれども、それは趣味程度のことなのだと私は勝手に思っていた。そうではないことを初めて知った。彼女は趣味的にオペラを始めたのではなくて、47歳から本格的に東京音楽大学に入学して基礎から学び、すぐ舞台に立つ機会を得て、その後もずっとプロのソプラノ歌手としてオペラ上演を行い続けているというのだ。大学に4年間通う間は、一切漫画の仕事はせず、無収入の中でやりくりしたそうだ。そして昨年11月に、東京から熱海へと本拠地を移動し、現在も「若手支援」目的のため私財をつぎ込んでいるというのだ。そして何より驚くのは、オペラというのはチケットが完売しても“赤字”になる世界だということ…儲けられる職業ではないらしい。かつて漫画家として一世を風靡し、記録的な売れ行きを達成した人物だが、71歳の今、預金のことごとくは「若手支援」のため失われたらしい。けれども、それを後悔する風はない。かつての漫画家を忘れたように、オペラ歌手として若手を育てようとする。実は私が「池田理代子」という人物に興味を持つのは漫画家として優れていたからだけではない。彼女のプライベートが「運命家」として、とても興味深いからだ。彼女はこれまで3回離婚し、4度結婚している。それ以外にも2度の“不倫スキャンダル”がある。公私とも、良くも悪くもエネルギッシュなのだ。多分、彼女は自分自身ではそのように思っていないかもしれないが、独りで何人分もの人生を“駆け抜けて”行くようなところがある。“不倫”にのめり込んだときには、仕事を放り出して失踪してしまった。近年の4度目の結婚では25歳年下男性と結ばれている。これまでの相手男性も、政治家、銀行家、編集者、経営者、声楽家とさまざまである。そういう点でも少女漫画のヒロイン以上にドラマチックな人生なのだ。そして今も「若手支援」のため舞台に立っている。女優ではないのだが、なぜか“運命を生きる”女優のような気がしてならないのはなぜだろう。
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