ときどき「怖い」と思う女性がいる。男性よりも女性の方が「怖い復讐」の仕方をする。アラブ首長国連邦に居住していたモロッコ人女性(30歳)は、そういう“怖い女性”の典型であろう。実は、事件そのものはかなり前に起こっていた。今年の夏、或る家族から警察に「息子が居なくなった」と捜索依頼が出された。警察は一応の捜査をしたが、有力情報はどこからも出て来なかった。家族が不審さを指摘した女性の周辺からも、問題は出て来なかった。なぜか“事件に巻き込まれた”予感がする兄弟は、警察には任せておけないと思った。行方不明の男性には付き合っていた恋人女性がいたのだが、その女性は妙に冷静で、まるで他人事のように反応した。何かを隠している。兄弟は、その女性が暮らす家の室内を徹底的に探し回った。すると、11月になって料理用ミキサーの淵から“人間の歯”が出て来たのだ。早速、彼らはこれを警察へと持ち込んで鑑定を依頼した。その結果、行方男性のDNAが検出され、恋人女性が殺人容疑で逮捕された。彼女はモロッコ出身だったが、彼と結婚できるものとばかり思っていた。ところが、いつまでも曖昧な返事を繰り返す恋人に激しく迫ると、彼は結婚を冷たく拒否したのだ。彼女は混乱し、そして逆上した。彼を殺害すると、遺体を切断、怒りと憎しみの感情のまま伝統料理を調理し始めた。こうして大量の「カプサ」を作った。炊き込み御飯に、通常は鶏肉などを加える。丁度、近くてビル建設をしている多数のパキスタン労働者たちがいた。彼らに振舞えば良い。その作戦は見事に当たり、多数の作業員たちが、何の疑問も抱かず、その肉料理を平らげてくれた。モロッコ人女性は古くからの伝統料理に感謝した。けれども、遺体を処理した時、歯が一つだけ零れ落ちたことを見逃していた。もしかしたら、調理されてしまった男性のかすかな抵抗が「歯」として、この世に残っていたのかもしれない。
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