奈良県桜井市に「大神神社」という由緒ある神社がある。その神社では毎年、神事としての「そうめん占い」が行われる。奈良市の名産品である「三輪そうめん」の“価格”を神事によって取り決めるのだ。神事には奈良県三輪素麵工業協同組合のお歴々が20名ほど集まる。その中で「卜定祭(ぼくじょうさい)」と呼ばれる儀式によって、その年の“そうめん卸値”が決められる。どういう風に決められるのかというと、多数の“紙玉(神玉)”の中から神職が一つだけ選び出した“紙玉価格”が、文字通り“その年の価格”として決められてしまうのだ。そして、今年は4年ぶりの「安値」として提示された。これを覆すことは出来ない。そこで今年の卸値は「一箱が10800円」に定まった。三輪そうめんの「誉(ほまれ)」という銘柄は、この地域でのみしか生産できない。したがって、ほんとうはもっと高くても良さそうなのに、神事で出た“紙玉価格”を覆すことは出来ない。なんとなく不満そうな面持ちではあるが、誰ひとりとして、その価格に不服を述べる者はいない。大昔、われわれは、このようにして“価格”を決定していたのか。実は全国には、作物にまつわる“神事としての占い”が、さまざまな形で行われている。その多くは“価格決定”ではなくて、作物の収穫が多いか少ないか、豊作か、凶作か、それを判定することが目的で行われたケースが多い。「立春」時に行われる地域と「正月(地域によっては旧正月)」時に行われる地域とがあるが、どちらかというと「非公開」で行われる神社の方が多い。伝統的なものとしては「粥占い」と呼ばれる方法や「鹿占い」による方法、更には「究の字占法」と呼ぶ方法もあって、実は私はこの「究の字占法」に関心が深く、これを何んとか“実用的な占い”に改良できないか、試行錯誤しているが、未だ“完成形”にまで持っていかれない。この「究」という文字には「一」と「六」と「八」と「九」という文字が潜んでいて、それだけでも“神秘的な成り立ち”の文字なのだということが解かる。この占いでは、眼を閉じて「究」の字を20枚書くのだが、その“書き方”や“描かれ方”や“重なり”などによって、占うことになる。大変に興味深く、面白い占法なのだが、実用化はなかなかに難しい。
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