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今日の迷言・余言・禁言

未来と運命に対するヒントがいっぱい


窮地に陥った時“その人の真価”が発揮される⁉


わたしが今日あるのは、あの社長のおかげだといって良い。「あの社長」の名前を出しても、たぶん誰も知らない。大体がわたし自身“下の方の名”は忘れてしまった。小さな町工場の“しがない社長”だった。わたしは人生における初めての勤めを、ここの会社に勤務して、この社長に教わったのだ。何よりも教えられたのは、そう簡単に“怒らないこと”だった。わたしは始終ミスを犯して製品を台無しにした。それに機械の扱い方が下手なので、すぐに止まったり変調したりする。そのつど社長は「またか⁉」という顔をしてやって来て「機械というのはね、女性と同じなんだよ……もっと、優しく丁寧に扱わないとね、こうやって様子を見ながら……そぅっと確かめていく……そうすれば何十年も使った機械でも、ちゃんと機能する…」わたしにというよりも、社長は自分自身に言い聞かせるような感じで、或いはその機械自体に言い聞かせるような感じで、何度も同じことを確認する。ちょっとずつ方法を変えながら、その違いを確認して、どこが問題なのか見つけ出していく。さまざまな方法を試して、これ以上は“確認すべき点がない”ような場合でも「どうすれば良いかな」といって決してあきらめなかった。それまで、大人になり切れていなかった私は実に単純で“すぐあきらめてしまう”弱点を持っていた。なんでもダメになると「もうイイや」といってすぐに投げ出してしまう。ものごとに対する執着力というものが元々希薄な生まれだった。けれども、この社長は何十年も使って既にガタガタになっている機械と対話しながら、その故障個所を見出し修理して、再び機能させていく。本物の修理屋さんよりも優秀ではないかと思うほど、機械の故障に強かった。そして、どんな場合にもあきらめなかった。なんど試みても、さまざまな方法を用いても治らない。そういう場合でも必ず「何か方法はないかな」と腕を組んだ。わたしのミスによって機械が故障しても、けっして怒らなかった。その時、わたしは何となく思ったのだ。もし私が成功したなら、こういう人になりたい、と思った。それなのに、わたしは、よくこの社長さんに「給料が少ない」といって文句を言った。社長室で「もっと私は働いている」と奇妙なことを言った。それなのに、この社長は怒らなかった。黙って、わたしの話を聴いていた。そうして「申し訳ないが、今はこれしか出せない、ほんとうは出してあげたいんだけど…」と哀しそうな顔をした。なんと素晴らしい社長だったのだろう。そして、なんと恥かしい「わたし」だったのだろう。
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