東南アジアの観光名所ではしばしば像が登場する。タイでも、カンボジアでも、ベトナムでも、ラオスでも、象乗り体験は人気のアトラクションだ。いや、正確には「…だった」と書くべきなのだろうか。アンコールワットで有名なカンボジアでは、自然保護活動家たちの批判によって、遺跡公園で行われてきた“象乗り体験”を来年初めまでにすべて中止すると発表された。今後、この動きは他の国々にも波及する可能性が強い。どうして禁止なのかというと、“象乗り体験”が「象を虐待している」からであるという。カンボジアには年間600万人以上の観光客が来る。どちらかというと欧米の観光客が多い。その観光客の多くは“象乗り体験”を試みる。評判は良かった。けれども、酷暑の中で休息時間もなく次々行われる“象乗り”は象自身には負担であるらしく、2016年に一頭の像が観光客を乗せている時に呼吸停止となって死亡した。この事件を皮切りに自然保護活動家たちが「虐待」と言い出したのだ。欧米人客が多いカンボジアでは、欧米人の多い自然保護活動家たちを敵に回したくないのだ。これまで仕事をしてきたゾウ達14頭は、今後も飼い主が面倒をみるということで決着したらしい。だが、私には今一つスッキリしない。“象乗り体験”は昔、私もタイで体験したことがある。予想以上に象の背中は高く盛り上がっている。それに歩くごと左右に揺れる。だから、本来は馬やラクダと違って乗り心地はそれほど良くない。多分、象自身にとっても“背中に負担が掛かる”ことは間違いがない。けれども、人を背中に乗せる行為が「虐待」と言えるのだろうか。別に鞭で叩くとか、エサを与えないとか、長時間にわたって働かせ続けるとか、そこまではいっていないはずだ。確かに、背中に負担はかかると思うので、休息をもっと取らせるとか、乗せる時間を限定するとか、労働のさせ方には考える余地があるが、虐待という言葉は適当ではない。昔から、人間のために“働いてくれる”動物はいろいろとある。もし、自然保護活動家の言うように、人間が勝手に動物を働かせることが「虐待」というのであれば、人間が勝手に動物を殺して「食肉」とすること自体が、最大の虐待と言えるだろう。けれども、自然保護活動家の多くは平然と“牛”や“豚”や“鶏”の肉を食べている。いや、厳密にいえば、植物だって“命”がある。だから、本当は人間が勝手に刈り取るとか摘み取るとかして食用とすること自体が、命を奪っているのだ。これらには目を瞑って、身近な動物にだけ「保護」を訴えるのはおかしい。通常の魚は食しても良くて、鯨だけを動物扱いするのもおかしい。矛盾だらけなのだ。もしかしたら、象だって、人間のために自分が役立っていることを感じて幸せなのかもしれないのだ。丁度、腰の曲がったお祖母さんが、孫のため畑仕事を続けるように…。
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