本が売れない…と言われて久しいが、御年92歳にしてベストセラーを出し続けている女性作家がいる。佐藤愛子氏だ。特別宣伝費をかけて売り出されたベストセラーではない。『九十歳。何がめでたい』は20万部を超え、『人間の煩悩』も12万部を突破している。つまり、両方とも小説ではなく、本音をぶちまけたエッセー本だ。それらの本を週刊誌では老齢の著名人たちがこぞって絶賛し、愛読書としていることが述べられている。『人間の煩悩』というタイトルは一見難しそうな印象を与えるが、その中身は明快で「人間も死んだらゴミだ」とか「傷つかず、傷もつけない人生はつまらない」とか「愛される老人になんかなりたくない」とか「人を救えると思うのは傲慢である」とか…。まあ、言いたいことをずけずけ言っているに過ぎない。けれども、これだけの支持が集まるというのは、実際に共鳴し、納得しているご老人たちが山ほどいるということの裏返しでもある。私の記憶が正しければ、この人は直木賞作家だが、その受賞連絡の場には存在せず、それよりも恋人との“デートの約束”の方を優先していたというエピソードも持ち主である。これも大昔の記憶で、雑誌に掲載されていた彼女の手相は“二重頭脳線”と呼ばれる形状の典型で、つまりは二本の平行する頭脳線を持っている手相だが、良くも悪くも“二重人格”の持ち主である。よく手相の本には“二重頭脳線”をやたら持ち上げて解説している本があるが、とんでもない誤解で基本的に“うそを平気でつける人”の典型である。だから、役者とか作家のような“別人を演ずる職業”としてはうってつけなのだ。つまり、何を言いたいのかというと、この人のエッセー。実は100%思いのままを“ぶちまけている”かのように装いながら、案外、本音とは違っているのかもしれないという…その辺を差し引きながら読まないといけない“危険な本”なのかも(?)しれないのだ。
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