誰にでも多少の「正義感」はある。だから深夜に「助けて‼」とか「もう止めて‼」といった若い女性の大声が聞こえてきたなら、その場に駆け付けてあげたい。すぐに助けてあげたい。本能的にはそう思うのだが、いざ実際にそういう場面に出くわして、すぐ駆け付けられるかというと、そうはいかない。第一、どんな場面なのかがわからない。相手が複数で凶器を持っているような場合、助けに向かって殺されてしまう場合だってあるからだ。11月19日の午前3時、札幌のススキノにある立体駐車場から、その悲鳴は聴こえた。丁度、後輩達とその場を通りかかったのが、長与千種氏だった。80年代「クラッシュギャルズ」として一世を風靡した元女子プロレスラーである。彼女はすぐに、現場に駆け付け、若い女性に馬乗りになっていた男性の身体を引き離した。「何やってんのよ、止めなさい」無意識に相手の両腕を抑え込む形になっていた。相手は長与氏の力に驚いたのか「もう、暴れない」と抵抗をやめた。そこで長与氏が手を離した瞬間、男は彼女の髪を鷲掴みにして後ろに引き摺り倒そうとした。ここで一般人であれば拳や膝で対抗できる。けれども、プロ格闘家は手出しができない。プロ格闘家の手足は“凶器”をみなされるからだ。仕方なく、長与氏は倒されまいと踏ん張った。相手の手を抑えようとしたが、逆にその手指もひねられた。すぐに後輩たちが男を取り押さえたが、少し遅かった。その結果、長与氏は大量の髪の毛を引き抜かれ、小指を骨折したのだ。改めて“正義の使者”としての「長与千種」の存在を知らしめる結果になった事件だが、彼女だったから軽傷で済んだ。もし、一般人であれば“小指の骨折”くらいでは済まなかったかもしれない。しかも、この事件、馬乗りの男女は“夫婦”であったことが後に判った。たまたまススキノ警察が近く、警官がすぐ駆け付けたから良いものの、もし犯人が逆上して暴行され、夫婦とも逃げ出せば“傷だらけ”のまま放置されることも十分あり得る。「正義感」は、ほどほどにしないと…。
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