人間というのは“切羽詰まった時”には誰でも共通のことを言う。だから、切羽詰まった時の言葉は信用できるのだ。私は以前から「辛坊治郎」という人物を興味深く見ている。なぜなら、一度「太平洋横断」に失敗して自衛隊に救助され、世間に“恥”をさらしたのに、もう一度「ヨット太平洋単独無寄港横断」へと出掛けたからだ。4月9日に大阪から出発して、19日は10日目にあたる。その昨日10日目に、彼の“冠番組”であるニッポン放送「辛坊治郎ズーム そこまで言うか!」で彼の代わりにCMを務めているメンバーから、番組内で「生存確認テレフォン」を行った。その中で辛坊氏は、大波に巻き込まれそうになって「これは“絶対に死ぬ”と思って、神々に祈ってですね……なんとか生き延びた感じですね」と話しているのだ。彼は“神に祈った”のではなく、とっさに“神々に祈った”のだ。同じようなものだが、これはぜんぜん違う。もちろん、これは宗教的にどうこうという話ではない。彼が“何宗”であるか知らない。われわれは本当に「死ぬ」と思った時、とっさに祈るのは“複数の神々”なのだ。「苦しい時の神頼み」とは、よく言ったもので、実際、死ぬような危険に遭遇すると誰でも“にわか信心”をして、祈るものだ。普段「信仰心などない」と言っているような人でも本能的に祈る。そして、それは“複数の神々”に対してなのだ。そして、死ぬような危険から脱すると「神様が救ってくれた」と純粋に信じ込む。この時は、どの神様というのでもない。“神様のどれかが”救いの手を差し伸べてくれたのだ、と理解する。考えてみれば“単純で身勝手な考え”なのだが、人は誰でも似たような“想い”と“行動”をとる。だから、それは責められない。要するに、人間とはそういうものだということである。われわれは、普段、神様という対象を“遠く”に感じているが、死ぬような危険が迫った時だけは“藁をも掴む”神教となって、日頃、祈ってもいない神々に対して、必死に祈りを捧げるように出来ているのだ。
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