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過去の占いコラム

素顔のひとり言(エッセイ集)


「運命」の扉を開くもの


私の職業は「占い師」だが、本当はこの職業に対して違和感がある。私自身は「運命研究家」になりたかったのだ。そして、その思いは今でも変わらない。私は幼い頃から現在まで、ずっと“人間の運命”そのものに惹かれてきた。「運命」としか呼びようのないものに、何故か惹きつけられ、魅了されてきた、と言っても良い。これは自分自身の運命というより、様々な人たちの運命と云った方が、よりピッタリする。もっと言えば“運命としか言いようのない人生”を歩んだ人たちの「運命」と言ったら解って頂けるだろうか。

人間には大きく分けて“二つの人種”がいる。その一つは、あまり「運命」を感じさせない人生を歩む人。つまり、取り立てて「運命」という言葉や表現を使うような場面が少ない履歴を歩んだ人生。確かに、そういう人もいる。けれども、その一方で「運命」という言葉や表現を使わずにはいられないような“過去”や“場面”を経験している人も多い。時代や環境や歴史が、自らの「運命」とクロスしている人たちも多い。

“時代の波”に翻弄される形で、愛する人を喪うとか、離れ離れになってしまう人たちもいる。本人の意思とは無関係に“偶然の出来事”が重なって人生を大きく変えていく場合も多い。出生時点で職業が決まっていたとか、結婚の形が決まっている場合もある。“運命的な出逢い”としか言いようのない形で、人生が180度転換していくケースもある。事故や事件に巻き込まれたことで、その後の人生が変わってしまう場合もある。

何故「運命」はあるのだろう。何が「運命」を作るのだろう。そして「運命」は本当に変えられるのだろうか。「運命の正体」を知りたい。「運命の本質」を探し出したい。「運命の秘密」を解き明かしたい。それは本当に“神の領域”なのだろうか。それとも個々の出生時における“天球図の様相”をそのまま反映したものにすぎないのだろうか。

幼い頃から、私は「人間の運命」の不可思議さに魅せられ、神の領域に踏み込むかもしれないことを恐れなかった。ただただ知りたかったのだ。どうしても知りたかったのだ。けれども、あれから50年以上の月日が経って、私は何を見たのか。神の領域に踏み込むどころか、神の領域に近づくことさえも、未だ出来ずにいる。宇宙に飛び出して「神の存在を感じた」宇宙飛行士たちがいたが、それらと変わることなく、私は無力だった。何一つ、ただの一つも、解明出来ていないもどかしさに苛立つのだ。

ただ“多くの人生”を見て、確信していることがある。「先天的運命」は確かに存在するが、そればかりではない。つまり「後天的運命」もあって、そちらの方は“自由意志”が使えて、それにより「運命」は“変更可能なもの”であること、とかく「運命」というと“不可避なもの”のように誤解されるが、そういうものばかりではなく、だから“人生は面白く”、人間として“生きていく価値あるもの”となっているということだ。けれども、人生のレールも“変換しやすい時・場所”があり、“変換しやすい方向”もある。それを間違えると、“無駄な努力”を重ねることになる。実は“ちょっとした違い”が、事実上、後々の“運命を大きく左右する”ことになっている事例が多い。多くの人は、最初から“大きな差がある”よう誤解しているが、実際には「人間の運命」には“大きな差”は存在していない。“大きな差”は、“ちょっとした違い”の積み重ねの中で広がっていくだけなのだ。

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