人間には誰しも、持って生まれた「移動運」のようなものがある。それが住居の移動と云う形で表れるか、職場の移動と云う形で表れるか、旅行による移動と云う形で表れるか、職務上の営業・出張・派遣のような形で表れるか一概には言えないが、それら全てを含めて先天的に“動きやすい人”と“動きにくい人”とがいる…ことは間違いがない。そして“動きやすい人”は生涯にわたって動き続けるような傾向があり“動きにくい人”は本当に動くことが稀なままで生涯を終えていくような気がする。
もちろん、同じ「動く」でも“住居”と“職場”と“旅行”とでは意味合いが大いに異なり、意図的に自ら動く場合と、指示を受けて動くとか強いられて動く場合でも意味が異なって来る。或る意味では住居にしろ職場にしろ強いられて動かざるを得ない方が、より“運命的な移動運”と言えるかもしれない。
奇妙なことに、先天的な移動運を持っている人は住居か職場のどちらかが動き続けるもので、時には両方とも動き続けることもある。また、住居も職場も動かない場合は、職務上の営業とか出張とか派遣という形で移動しているのが常で、それもない場合はプライベートの旅行と云う形で本能的に動こうとする。もちろん、途中から移動運そのものが無くなって落ち着いてしまうケースも稀にはあるが、そういうのは本当に稀であって病気でない限り移動運は生涯継続し続けていくのが普通のようだ。
私が移動運に注目するのは、それが自らの意思で動いた場合でも、そうではなく強制的に動かされる形で動いた場合でも「吉凶、動より生ず」と云う運命学的な諺が示すように、動いたことによって人生が、或いは運命が大きく異なった方向へと舵を切られていくケースが多いことである。時には予期せぬ人やモノとの“出逢い”が生れて、それによって180度人生が転換していくケースさえもある。多分、そこに、その時期に行かなかったなら、そういうことにはならなかったであろう…と思われる事例も多い。今日の一般的な方位学的吉凶には疑問とする部分も多いのだが、動いたことで結果的に変化し始める部分が出て来ることだけは誰もが暗黙に認めることだろう。同じ人間でありながら、動くことで、環境が変わり、意識も変わり、新たなる素質や運命が引き出されて来ることだけは間違いがない。
逆に移動運の乏しい人は、生涯にわたって出生地域を離れないような人もいる。たまに旅行をするようなことはあっても、長期間の旅行とか長距離間の移動とかは本当に稀であって、その生涯のほとんどを出生地域から遠くない範囲内だけで済まそうとする。そういう人は奇妙なことに仕事・職場の変化も乏しく部署・職務も滅多に変らず、一生涯に1~2度くらいしか転職もしていないのが普通だ。実は多くの人は気付いていないのだが、そういう人に家系血縁的、或いは先祖伝来的な職業分野で成功している人達が多い。また身内・親戚の縁が厚く、交流が長く続き、良くも悪くも身内からの運命的な影響が強いような気がする。
振り返って私自身はどうなのかと云うと、仕事・職業的な変化は比較的乏しい方だが、こと住居に関しては先天的な移動運を持っているようで、これまで一ヵ所に長く腰を落ち着けていた記憶がない。現在の住居に移って丁度五年目に入ろうとしているが、そういう意味では私の中で“動きやすい人”の心理が頭をもたげ生活上の刺激や変化を要求し始めているようだ。自らの過去は長期間にわたって一ヵ所に居住し続けたことがなく、記憶しているだけでも19回の転居歴がある。或いはもっとあるかもしれないが忘れてしまった。転居する理由は様々だが、動かざるを得なかった理由が出て来てのことが多かった。ただ良い住居でも5~6年目になると、実際には何かの理由をこじつけて動いていたような気もする。そろそろ動きたい虫が騒ぎだすのは当然かもしれなかった。但し、問題は今の住居が賃貸ではなく分譲で購入しているという点だ。通常、分譲で購入するということは、その家や場所に長く住みつくと云うことを前提として行う。永遠の住処として多くの人は住宅を購入するのだ。ましてや「風水」と云うものを身に着けている占い師である私が、自ら択び抜いた住居であるから、風水的な観点からは非の打ちどころがない。豊平川に掛る橋のたもとに建っていて、主要道路の分岐点内側に当る建物であり、東~南東に水回りが集まる間取りも良く、棟全体の南東角部屋と云う条件もクリアし、高層階と云う条件をもクリアし、花火大会も見られる最高の眺望にも恵まれながら、そこを離れたくなるというのは一体どうしてなのだろう。自分自身でも本当のところよく解からない。単純に飽きたからなのか、生活に変化が欲しいのか、刺激が欲しいのか、新たなる出逢いを求めているのか―とにかく私の中の何かが微妙に動きたがっているような気がする。もっとも、人一倍面倒臭がり屋さんで、ロボット的な型に嵌まった生活を好む部分も私にはある。5年前の引っ越し時を思い出すと、何よりも手間や面倒さが先に建つ。多分、もう少し経てば私の中の“動きたい病”も少しは収まってくれるのに違いない。なにしろ風水的に良い条件の住居と云うのは限られており、今の場所、今の住居より良い所を探すのは容易ではないからだ。
掲載日:2012年02月07日
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