海外に出掛けると、私は最近その地方の占い師に占ってもらうことが恒例となっている。今回は台北へと行ったので、観光でも有名な行天宮地下にある「占い横丁」へと行ってみた。
日本のマスコミで何回も取り上げられたと云う李氏のテーブルの上には、確かに多数の日本人マスコミ関係者からの名刺が張られていた。15分ほどで(私の場合は10分弱くらい)1000元(日本円で4000円)は、日本における商業ビル系占い師と比べても、決して安いとは云えない料金だ。しかも、前口上が長いと云うか、自慢好きなのか、とにかく自分の過去を、よく喋る。私にだけなのかと思ったら、そうでもないらしい。だから、実際の占いへと入るまでに時間が掛かる。
まず、名前を書かせられたので「波木星龍」と記したら「達筆でいらっしゃいますね」と、驚いたような表情をした。日本で云う「四柱推命」用の赤い記入用紙があって、そこに私の生年月日から、星を表出して「命式」を立てていくのだが、その様子自体は手慣れた毛筆で記入していくだけに、おごそかな雰囲気があった。ただ、その星の出し方は「神殺式」と云って、台湾内部では評価の低い見方であることを私は知っている。もっとも、そんなことを見てもらう立場で口に出すほど野暮ではない。
彼は「あなたは頭が良い。大学院を出ているのか?」と云うので「いや、出ていません」「大学は出ているだろう?」「…」「とにかく頭が良い。仕事は何をしている?」「自営業です」一瞬、沈黙があった。「手相を見せなさい」「はい」「ほうら、成功線があるだろう」と云って、彼が示したのは中指へと向かう「運命線」のことであった。しかし、運命線など誰にでもある。「だから、何をやっても成功する」「…」「会社員なら社長になる。ヤクザなら親分になれる」自営業だと告げているのに、会社員とかヤクザとか云う。しかも「本当はヤクザじゃないのか?」と言いたげですら、ある。私がサングラスを外さなかったからだろうか。しかし、それにしては大学院を出ているとか矛盾している気がしないでもない。
「金運の方はどうでしょうか?」具体的な質問を向けてみた。すると、彼は再び四柱推命の命式を指し示した。「あんたは財星がいっぱいだよ。お金に困らない」「一生と云うことですか?」「もちろん」そう云われてしまうと、もう占ってもらう気持ちが失せていった。
中国の古典的占術書の中に「富家の貧人」と云う言葉が載っている。これは命式の中に「財星」が多すぎると、常にお金に囲まれた環境下で生活するけれども、実際に自分が手にできるお金は乏しい…と云う意味で、例えば金融関連で働く人たちなどは、何千万と云うお金を日常で扱いながら、自分自身の財布に入ることは滅多にない。そういう状態を云うのだが、私の命式はそこまで財星一色ではないが、かなりそれに近いところを持っている。今現在はともかく、十代までは極貧の家庭で育った。決してお金に困らない一生ではない。
そういうわけで、世界へ出て行くと、案外、日本の占いレベルの高いことを痛感させられることも多い。ただ書籍に関しては占術書の数の多さに圧倒させられる。地下書店街と云う所へ行ったが、神田の古書店街をほうふつとさせる。その一角に占術関連書籍を扱ったところがあった。日本でなら何万円もする本が、ここでは1200円~2000円程度で手に入る。今回は、さまざまなところで占いの本を購入した。何しろ仏具店でも占い書を扱っているのだ。ただ、日本に帰って来てよく読むと、向こうの暦がないと使えない代物だった。しかし、貴重な本も何冊かあり、そういう意味では台北はまさしく吉凶混合の占い天国といえよう。
掲載日:2007年07月17日
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