掌の惑星丘(西洋式)
掌の八卦丘(中国式)
今日、日本で広く普及しているのは”西洋式手相術”です。明治の終わりから大正にかけて、欧米で出版されていた手相書を翻訳した内容の書物が日本でも発売されるようになり、一気に日本でも西洋式手相術の見方が広まりました。それまでは人相術の一分科として中国式の見方一辺倒で行われていたのです。
昭和30年頃までは伝統的な中国式判断方法も一部では採用され続けましたが、時代の流れには勝てず、やがて完全に失われてしまいました。けれども、よくよく吟味してみると、中国式手相術には西洋式と共通する部分もあり、相違している部分にも西洋式より合理的と思われる解釈も存在するのです。しかも、西洋式の弱点である”今現在起っていることを判断する方法”が血色・気色観法として確立されているのです。
近年になって中国医療である鍼灸や漢方、気功や風水が再評価されたように、中国式手相術ももっと再評価されてよい。と私は思うのです。但しそれは一部の流派が唄導している「玉掌流手相術」ではありません。大体、本来の玉掌流は「奇門遁甲」という占術を手相に当てはめたりしません。
実占的な立場から言えば、西洋式や中国式にこだわらず有効な見方は採用して行く、という姿勢が大切だと思われます。
古代エジプト系の四枚のカードですが、それぞれに図柄は違っているようです。四枚の内ではカラシマ・カードのみ「ヌウト」と、この女神の名称を表記しています。ただ図柄で云うなら、ネフェルタリー・タロットの方が本来の「ヌウト」の図柄を忠実に表わしているようです。トート・タロットとアンセント・タロットは、図柄としてはウエイト系やマルセイユ系のカードの図柄に近く、中央に裸の女性を描き、その四方に12星座の象形と思しきものが描かれています。「おうし→しし→はやぶさ→にんげん」がアンセント・カードの星座で、「おひつじ→おうし→はげわし→にんげん」がトート・カードの星座のようです。
四枚のエジプト系カードの内、ネフェルタリー・タロットとカラシマ・タロットでは、文字通りミイラが描かれていて、その上部に「バー」と呼ぶ「霊魂」が旋回しているようです。また、アンセント・カードも含めて、ここに描かれているミイラとしての人物は「オシリス神」で、古代エジプトの神話・伝承に基づく「オシリスの復活」場面を描こうとしたもののようです。トート・タロットだけが違っていて「ハロエリス」と云う子供時代のホルスを半透明に描き、成人後の「ホルス神」を実像として小さく描いています。
古代エジプト文明の歴史において、太陽神の存在は、その原初から切り離すことのできない重要な位置を占めていました。元々が砂漠に隣接するエジプトの生活は、太陽を抜きにして語ることのできない地域だからです。
エジプト系タロットカードにおいても、それぞれ図柄デザインは違っていても、太陽をメインに描いていることは当然です。ただ、同じ太陽神でも、ここでは明らかに名称の異なる太陽神が登場しています。カラシマ・カードでは「ラー」として描かれ、ネフェルタリー・タロットでは明らかに「アトン」として描かれています。トート・タロットとアンセント・タロットでは、特定の名称は示されていませんが、印象的にはカラシマ・タロットと同じく「ラー」として描いたものでしょう。
古代エジプト文明と云うと、どうしても太陽神主体で、月神は隅っこに追いやられてしまいがちな印象を受けます。けれども、月神が存在しなかったわけではないのです。ここに示した四枚のカードの内、カラシマ・タロットでは「コンス」と云う月神の名称を、唯一カードに対して与えています。四枚のカードに共通しているのは、大きく不気味な印象の月と「死神」のカードでも登場していた山犬の神「アヌビス」が対の形で描かれていることです。通常、山犬の神はアヌビス神ですが、稀には「ウプウアト神」と呼ばれる死者の案内人として表現されているケースもあります。どちらも死者に関わっていて、紛らわしい存在ですが、ミイラの守護神が「アヌビス」、墓地の守護神が「ウプウアト」と捉えるのが妥当でしょう。
四枚のカードの内、三枚までが裸の女性が片立ち膝姿で川辺にいる姿で表現されています。もう一枚も洋服は身に着けているようですが、川辺であることは同一です。また、四枚のうち三枚までが二つの壺を操り、すべてのカードが星空を背景としています。これらの点から、比較的同一のデザインで統一されている珍しいカードが「17」とも云えます。
エジプト系四枚のカードの内、カラシマ・タロットが「ピラミッド」を表わし、アンセント・カードはピラミッドとオベリスクの双方を描き、ネフェルタリー・カードはオベリスクのみを表わし、トート・カードはそのどちらでもないバビロニア系ジグラットのような塔が描かれているようです。ただ、いずれも塔が崩壊・破壊する瞬間を描こうとしているようです。
エジプト系カードの四枚でも、それぞれにカードの図柄が異なっているのが「悪魔」のカードです。この四枚のカードの中ではアンセント・カードに描かれている「悪魔」が最も古代エジプトの神として知られる「セト神」の姿に符合しています。それはロバに似た長い顔立ちの角張った耳を持つ手肢の長い架空動物です。同じセト神としての表現でも、ネフェルタリー・タロットの「セト」は、カバとワニの合体動物のような姿で表現されていますが、これも「セト」表現の一形態として広く知られています。
この「節制」のカードに対して、オーソドックスなタロット教科書がどのようなことを書いているか興味があったので調べてみました。ゴールデン・ドーンの解説書では「天使が二つのカップを手にして、神の酒を入れ替えている。物事の均衡、バランスを象徴している(中略)火のような情熱と水のような優しさが中和され、一つの完成した生活を生み出している」と記されています。メイザースの教科書でも「天使が一方の壺から一方の壺へと水を移し替えている。一つのものの他のものへの応用、或いは二つのものの融合を表している」と記されています。アーサー・ウエイトの教科書では「二つの杯の間で生命素を移し替えながら、片方の足は大地に、もう片方は水中に入れることで生命と云うものの本質を説明している」と記されています。いずれもやや抽象的すぎて解かりにくく難しい解説に終始しています。
オーソドックスなタロットカードでは、骸骨となった裸体が草刈りガマを振るう姿で描かれることの多い「死神」のカードですが、エジプト系のタロットでは4枚のうち3枚までが、古代エジプトでミイラ作りを担当した「アヌビスの神」を「13」のナンバーカードに当てはめています。トート・タロットだけが、オーソドックスな骸骨姿にエジプト王冠(本当のエジプト王冠は白色なのですが…)をかぶせて、異色の死神像を作画しているようです。
四枚のカードのうちの三枚までが、文字通り「吊るされた男」を描いています。そして、その図柄も基本的にはほぼ同一で、片足首に綱が巻かれて吊り下げられている姿です。ところが、ただ一枚ネフェルタリー・タロットだけが、特殊な図柄となっているのが印象的です。実は、これは古代エジプトのレリーフとして実在する奉納用化粧版の図柄なのです。それも第1王朝の創設者で、上下エジプト王国を統一したとされているナルメル王の勇姿なのです。もちろん、敵を跪かせて、こん棒を振りかざしているのがナルメルで、その頭上のホルス神(象形ハヤブサ)はヒエログリフで下エジプト地域を制圧した、と記しているようです。記録によれば、このときの捕虜は12万名とも示されています。
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