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過去の占いコラム

素顔のひとり言(エッセイ集)


「辻占い」の時代


いつもパソコンに向かうとき、私の眼下には豊平川に架かる橋があり、その橋を行き交う車の方列が見える。それ以外の部分が、まだ残雪で白いため、余計に橋が際立ち、車の方列が陽の光を受けて鈍く輝く。

その昔、川に架かる橋は人が通るところで、車の通るところではなかった。人以外で通るのは、馬車や人力車だった。時代劇などで時折見掛けるが、橋を行き交う人たちは当然のことながら和服姿で、そぞろ歩きしながら会話を愉しんでいた。現代でも、花火大会の夜などは、それに近い光景が見られることもある。

そういう環境下の中で「辻占い」は生れた。辻占いは通常、四つ角に立って占う占法だが、橋の袂で行われることも多かった。おもに夕方に行うので「夕占(ゆうけ)」と呼ばれることもあった。一説によると、占なう本人が四つ角、或いは橋の袂に立って、辻占の神に心の中で祈りを捧げてから、三番目に来た人たちの会話が占いの決め手になるという。つまり、その人達が何を話しているか―その内容が、そのまま占なうことへの答えだ、と云うのだ。例えば、本人が恋愛の今後を占なって、三番目に通った人達が、仮に「本当に仕様がない奴だよ。結局、別れたんだろう」と、云っているのが聴こえてきたとする。そうすると、それはそのまま占いの答えなので、本人の恋愛も、そのような結末に向かっていく―と、判断するのだ。

単なる偶然の会話に過ぎない―それに答えを求めるのは、非科学的だ、と考える人がいるかもしれない。けれども、占いというのは、最終的には非科学的なものであって、決して科学的に占なっているわけではない。一見、科学的なように見える占星術や四柱推命なども、その判断へのプロセスが科学的(又は合理的)なだけなのであって、判断そのものは必ずしも科学的とは云い得ない。

科学として公認されている気象予報や地震予報なども、実質的にはそうだ。だから、開花予想や長期予想など、間違えることが多いのだ。大体、長期予想など、当たることの方が少ない。漁師や農家などで勘の鋭い人の方が、余程正確である。それは明日の生活が掛かっているから、経験的な予知能力が磨かれるからだ。鼠などの動物だって、生きていく上での予知能力は、科学的な予知よりはるかに正確だ。

科学(合理)的なプロセスを踏む占いのみを、正しいなどという占い師は、あまり信用できない。そういうような占い師に限って、実際の自然科学を持ち出して理屈をつけるが、そんなに科学的だというなら、一般の科学者たちからの力添えを得て、占いを学校の正規の教科書で取り上げられるように、1日も早くしてもらいたいものだ。実際、私は昔、それが夢であった。占いを学校の教科書に載せること―しかし、いつの頃からか、そういう幻想は抱かなくなった。占いは、人生や運命と直接関わる。薄っぺらな学校の教科書で、むしろ教えられてはいけないもののような気がし出したからだ。人間の運命と真正面から向き合うことの出来る人のみに、神はその役割を託そうとしているのではないだろうか。

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