大昔、私がまだ子供だった頃『東京オリンピック』の記録映画を見た。ほとんどの内容は忘れてしまったが、男子マラソンの覇者エチオピア・アベベ選手が裸足で黙々と走り続ける姿だけが妙に生々しく記憶に残っている。
確かあの時、日本の円谷選手は3位銅メダルだったが、その後、足を怪我して思うように走れなくなったことなどから思いつめ、やがて自殺してしまうのだった。思えば、あの時から日本のマラソンランナーには、栄光と挫折がついて回っているような気がする。今回も、金メダル候補であった野口みずき選手の欠場が決定的となった。スポーツの世界、なかでもオリンピックは4年に1度だけに種々のアクシデントが発生しやすい。特にマラソン競技と云うのは、古代のアテネオリンピックと同一の42.195㌔を走るだけに、本当は初期のオリンピック精神がもっとも反映されやすい競技なのだ。
事実、オリンピックとは別に、マラソン大会は世界各地で年々増えていて日本のマラソン人口も右肩上がりだ。ただ走る―それだけの競技なのに、マラソン人気は衰えることがない。なぜだろう。
まず第一に誰でも出来る。これくらい年齢層の広いスポーツは他にない。オリンピックはやや難しいが、プロとアマ(初心者)とが同時に出場できる。このようなスポーツも他にない。途中で疲れて歩き出したとしても、それを咎める者は誰もいない。本来は走る競技なのだから違反なのだが、基本的には許されている。失格や棄権とはならない。途中の給水係など、ボランティアが活躍しやすい。このようなスポーツも珍しい。さらに沿道の応援である。通常の競技では上位の者には声援が送られるが、下位とかビリとかの者に対しては声援しないものだが、この競技だけは拍手されたり、声援を送られたりする。時としては、上位の者よりもビリの者に対しての声援の方が大きかったりすることもある。摩訶不思議な競技なのだ。いや、もっと不思議なのは、どこのだれかも知らないビリの者に対して拍手したり、声援したりすることだ。このような競技が他にあるだろうか。
マラソン競技は、誰もがそれに近いことを一度は経験している。少なくとも走ったことはある。何かの理由で息が切れるまで走ったことはある。実に単純で、ルールも簡単で、紛らわしい勝敗結果となることもなく、誰が見ても理解でき、経験的な要素もあり、辛い競技であることを知っている。体力差と云うハンデもなく、年齢差もあまり関係ない。古代のオリンピック精神を伝えていくのに、これほど理想的な競技は他にないのだ。
水泳さえも、水着によって優劣が左右され、裸のスポーツとは云えなくなった。マラソンは裸足でも金メダルを取れるのだ。ただ、このところオリンピックの日本の選手選考などを見ていると、首を傾げることもしばしばある。偏りのない選考にしないと、オリンピック精神が泣く。私は以前、柔道の谷亮子選手のオリンピック出場は、決勝で敗れているのにおかしいと指摘した。その通りの結果となったが、名前で出す、と云うようなことはスポーツ競技のフェアー精神に反するので止めて欲しいものだ。もっとも、オリンピック自体がそうであるように、決して平和の祭典でも、平等の精神でもないのが世の中の現実かもしれない。
マラソン競技と云うのは、どこか人生に似ている。誰もがそれを暗黙に認めている。だからこそビリの人にも応援したりするのだ。時としてマラソンランナーは、我々が「運命」と呼ぶ摩訶不思議な実態の検証者なのかもしれない。シドニーオリンピックの覇者・高橋尚子は「愉しんで走った」マラソンから「必死で走った」マラソンに変わった時、運命の女神は皮肉にも彼女を遠ざけたのだ。いつか彼女は、それを悟って子供達にマラソンの楽しさを教えるようになるだろう。そうなったとき、再び彼女は運命の女神を味方につけて輝いているに違いない。
掲載日:2008年08月16日
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