ここに示した4種類のタロットカードは、いずれも古代エジプト文明を、その図柄デザインの中に取り入れているカードです。 ただし、私の秘密のカード解釈は、一般に知られているものとはその多くが異なり、まったく独自の古代エジプト文明解釈に裏打ちされており、 エジプト系カードを用いながら、原初タロットカードの真実の姿を皆様にお伝えしようとするものです。
アンセント・タロット
ネフェルタリー・タロット
トート・タロット
カラシマ・タロット
古代エジプト系の四枚のカードですが、それぞれに図柄は違っているようです。四枚の内ではカラシマ・カードのみ「ヌウト」と、この女神の名称を表記しています。ただ図柄で云うなら、ネフェルタ 続きを読む
四枚のエジプト系カードの内、ネフェルタリー・タロットとカラシマ・タロットでは、文字通りミイラが描かれていて、その上部に「バー」と呼ぶ「霊魂」が旋回しているようです。また、アンセント 続きを読む
古代エジプト文明の歴史において、太陽神の存在は、その原初から切り離すことのできない重要な位置を占めていました。元々が砂漠に隣接するエジプトの生活は、太陽を抜きにして語ることのできな 続きを読む
古代エジプト文明と云うと、どうしても太陽神主体で、月神は隅っこに追いやられてしまいがちな印象を受けます。けれども、月神が存在しなかったわけではないのです。ここに示した四枚のカードの 続きを読む
四枚のカードの内、三枚までが裸の女性が片立ち膝姿で川辺にいる姿で表現されています。もう一枚も洋服は身に着けているようですが、川辺であることは同一です。また、四枚のうち三枚までが二つ 続きを読む
エジプト系四枚のカードの内、カラシマ・タロットが「ピラミッド」を表わし、アンセント・カードはピラミッドとオベリスクの双方を描き、ネフェルタリー・カードはオベリスクのみを表わし、トー 続きを読む
エジプト系カードの四枚でも、それぞれにカードの図柄が異なっているのが「悪魔」のカードです。この四枚のカードの中ではアンセント・カードに描かれている「悪魔」が最も古代エジプトの神とし 続きを読む
この「節制」のカードに対して、オーソドックスなタロット教科書がどのようなことを書いているか興味があったので調べてみました。ゴールデン・ドーンの解説書では「天使が二つのカップを手にし 続きを読む
オーソドックスなタロットカードでは、骸骨となった裸体が草刈りガマを振るう姿で描かれることの多い「死神」のカードですが、エジプト系のタロットでは4枚のうち3枚までが、古代エジプトでミ 続きを読む
四枚のカードのうちの三枚までが、文字通り「吊るされた男」を描いています。そして、その図柄も基本的にはほぼ同一で、片足首に綱が巻かれて吊り下げられている姿です。ところが、ただ一枚ネフ 続きを読む
タロット解説
大アルカナカードの「10」に指定されているのが、一般に「運命の輪」の名称で知られているカードです。エジプト系カードにおいては、珍しく四枚とも図柄デザインが異なっており、共通するのは輪が描かれていることぐらいです。
エジプト系以外のカードにおいても、このカードの図柄はそれぞれに違っていて、共通性を見出すのはかなり難しいものです。20世紀に活躍したリガルディのタロットでは、上部に横向きのスフィンクス、中央部に輪、下部に跪いている犬頭の猿が描かれています。19世紀に活躍したウェイトのタロットでは、輪の上にスフィンクスが乗り、その左右に犬頭人身と、蛇とが描かれ、カードの四隅にはエゼキエル書の四生物が描かれています。18世紀に活躍したエッティラのタロットでは、王冠を被ったサルが木の枝の上に描かれ、輪に絡みつくような形で、下降していく人間と、上昇して行くネズミとが描かれています。17世紀に活躍したメイザースのタロットでは、輪の上方にスフィンクスが座し、輪に絡みつく形で上昇する側に犬が、下降する側に猿が描かれています。
最も、古い17世紀のカードに、解釈の秘密が隠されているようです。スフィンクスは、古代エジプトの新王国時代「ホル・エム・アケト」と呼ばれ「地平線上の太陽神」を意味していました。つまり、地平線上から上昇する朝日と、地平線下に沈んでいく夕日との象徴だったのです。さらに、エジプトにおけるもう一つのライオンの神「アケル」もまた、地平線を守る守護神でした。死後生命を信じる古代エジプトにおいて、雨の降らないエジプトにおいて、天空と地底とを循環し続ける太陽、その境界線としての地平線は重要でした。死者は、ミイラとなって、新たなる命を吹き込まれ、地平線下で蘇ります。その新たなる命を吹き込む役割は、山犬の神「アヌビス」と、イビスの神「トト」です。新たなる命を吹き込む儀式を「口開きの儀式」と呼びます。つまり、ミイラの口を開いて死後の命を吹き込む為の儀式です。
実際には、アヌビスの仮面をつけた神官と、トトの仮面をつけた神官とが、口開きの儀式を執り行います。死者であるオシリス神王の側近としてのアヌビス神と、生者であるホルス神王の側近としてのトト神と、この2神が、死者と生者の境界線で、ミイラに命を吹き込むのです。トト神は、通常イビス(アフリカクロトキ)で表現されるのですが、時としてヒヒによっても象徴されることがあります。メイザースのタロットで扱われている「猿」は、実際にはヒヒを描こうとしていたのだと思われます。口開きの儀式は、やがて形骸化し、ミイラだけではなく、彫像によっても執り行われるようになりました。古代エジプトの神王たちが、多数の等身大の彫像を持っているのは、この為なのです。意味もなく、等身大に作っているわけではないのです。万一、ミイラが盗まれたとしても、等身大の彫像に命が吹き込まれていれば、死後生命の本体である「カー」は、そこに宿ることが出来るからです。
ギザのクフ王のピラミッドにおいて、俗に「女王の間」と呼ばれている部屋には、壁面に彫像を安置させておくための窪みがあり、原初、そこに彫像が安置されていたことは間違いありません。この部屋からは2本のシャフトが延びていて、クフ王の時代、北シャフトは小熊座のベータ星、南シャフトはシリウスに向かっていました。口開きの儀式においては、牛の前脚と手斧が、ミイラや彫像の口に触れられました。牛の前脚は、古代エジプトでは北斗七星の象徴です。同時に、既に述べたように、古代エジプトでシリウスは、天空船に乗った子牛として表現されていたことは、注目すべき事実です。
実占において私は、タロットの生徒さんたちには、このカードを「運命の回り舞台」として、歌舞伎の世界で使われる回り舞台のようなものだ、と教えています。つまり、幸運と不運とが、入れ替わるよう仕組まれた人生の運勢舞台だと思うからです。これまで表舞台で活躍してきた人たちは裏舞台へと消え、代わりに、これまで裏舞台で苦労してきた人たちにスポットライトが当たる――そういう入れ替わりの時期を暗示したカードだと思うからです。
タロットカードは、まず最初、円を描くように回転させながらシャッフルします。「運命の輪」は、正に、この回転する人々の姿なのです。カードに描かれている人々は、時として擬人化されていることもありますが、基本的には、さまざまな人間の姿の風刺系です。人は、誰でも回転しながら、回り舞台の袖で、次の出番を待っているのかもしれません。