映画「007」シリーズと言えば、私が「男はつらいよ」と同じくらい十代の頃から好んで見た映画だ。それにしても長い、もう「寅さん」は終わったというのに「007」の方は主人公ジェームズボンド役をさまざまな男優に入れ替えながら60年以上も続いている。いかに「007」好みの映画ファンが多いかを物語っている。ただ最近は昔ほどの“おもしろみ”がない。それにはいくつかの理由がある。一番は「007」も「男はつらいよ」も、時代背景というものを取り入れながらストーリーを組み立てているのだが、その“時代背景”というか“世界情勢”というか、そういうものが昔ほど“単純明快”ではなくなってきているからだ。初期の頃の「007」は“西側”と“東側”の対立という構図の中で、スパイが活躍する物語だった。それも“陰湿なスパイ”ではなくて、どちらかと言えば“華やかなスパイ”であり、美女との絡みが娯楽性を際立たせていた。その点では「男はつらいよ」もまったく同様で、毎回登場するマドンナが“世知辛い世の中”を明るく変えていた。世の中にしろ、恋愛にしろ、解かりやすく単純だったのだ。だから、両方共、主人公は住所不定で問題児、女好きで正義感は強いという“共通性”が支持を得ていた。さて。現代は、そうはいかない。まず、世の中が“単純”ではない。昨日の敵は今日の味方で、敵と味方が入り乱れている。世の中全体がそうなってしまっている。そういう意味では、もう「車寅次郎」の時代ではないのかもしれない。だが、おいちゃんは、ああいう時代が好きなんだけどなあ。「007」と言えば“スパイのナンバー”なのだが、その「007」が主役のジェームズボンドから「黒人女性」に“引き継がれる”らしい。要するに、現在のボンド役ダニエル・クレイグは25作までで、新たな女優ラシャ―ナ・リンチが「007」に就任するというわけだ。まあ、元々スパイが主人公の映画なのだから、女性が演じても何ら問題がないといえばないのだが、何かが違う。まず、女性主人公の場合、そのアクションに限界が出るだろう。特にアクションという点では、これまでの(6代目ボンド)ダニエル・クレイグはスタントマンを使わず、取り組んでいて中々に見ごたえがあった。もっとも、世相を反映するという点から言えば、本来、あんなに派手なアクションはおかしいのであって、コンピューターの世界で完結しているのが“現代のスパイ”かもしれない。これからは「ボンドガール」という用語も禁止で「ボンドウーマン」に変更するらしい。これも時代なのか。「ボンドガール」は「ボンドガール」で良いじゃないか。豊満ボディで男性を誘惑する…というお決まりのパターンが反感を買っているのかもしれないが、すべての生物界がそういう風に出来ているのだから、そういう“自然の摂理”を無理に壊すのはどうなのだろう。「車寅次郎」でなくても、おいちゃんにはわかんないなあ。
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