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過去の占いコラム

素顔のひとり言(エッセイ集)


ザヒ博士の「クフ王墓」仮説は間違っている


日本テレビ「古代エジプト三大ミステリー」を見た。現代エジプト学の権威ザヒ博士の仮説を前面に押し出しながら「ピラミッド」と「ツタンカーメン」と「クレオパトラ」の謎に迫る…と云う構成であった。これまで日本のTV局が古代エジプトを扱う場合、必ずと云って良いほど出演していたエジプト学者・吉村作治の姿はなかった。番組中、一言も触れなかった。良い悪いは別として、時代が変わりつつあることを感じさせた。

ただ日本で放映する場合、ザヒ博士の仮説を前面に出すなら、吉村作治以外のエジプト学者も多数いるのであるから、そういった学者のコメントも加えないと、やや違和感が残る。それはたぶん私だけではないはずだ。

しかも、その新仮説と云うのが「大ピラミッドはクフ王の王墓で、そのミイラは地下深くに眠っているはず…」と云う、決して新しくない仮設なのだからなおさらだ。そうこれこそが「エジプトツアー」でガイドに解説を頼めば、必ず話してくれるお決まりの仮説ではないか。

ザヒ博士の仮説は20世紀全般のエジプト学者たちの仮説に逆戻りしているだけで、決して新しいものではない。それなのにどうして彼らは新しいと云うのか。それは、この仮説がいったん封印されてエジプト学ではタブーとなっていたからだ。なぜなら、それを否定する材料があまりに多かったからだ。

実はエジプトのピラミッド内から、王のミイラが発見されたことは一度もない。少なくとも19世紀以降はそうだ。もしかしたら、それ以前に持ち去られた可能性があるので、最初からなかったと云いきることはできないが「王家の谷」のように明らかな墓室となっていなかったことだけは確かだ。ザヒ博士は第3ピラミッドの地下にある墓室を案内して、ここでヴァイズは棺を発見しているから、大ピラミッドの方でも墓室や棺は存在するに違いない、と結論付けている。けれども、そこから発見された棺はメンカウラー王時代のものとは云えず、ミイラの存在も確認されてはいない。唯一ミイラらしきものの断片が見つかっているのは、元祖ピラミッドであるジョセル王「階段ピラミッド」の方だ。ただエジプト学者たちが、これを声高に主張しないのにはわけがある。このピラミッドは、明らかに最初は「マスタバ(台形墓)」として作ったものを土台として、階段型ピラミッドへと切り替えているからだ。つまり、元々がお墓だったところを利用してピラミッドに作り替えているので、ミイラが出てきて当然だからである。

このジョセル王以降にピラミッド建設は本格化していく。ところが、ここにも奇妙な事実が存在している。明らかに最初からピラミッド建設を意図していながら、途中放棄してしまった未完ピラミッドをエジプト学者ゴイネムは発見している。しかも、発見まで未盗掘であったことが確実な姿で…。ツタンカーメン王墓の発見に匹敵するとマスコミも勢いたった。しかも内部から石棺が発見されたのだ。ご丁寧に棺の上には花束まで添えられていた。マスコミ各社立会の元ゴイネムは石棺を開いた。一瞬、そこに居た誰もが息をのんだ。何も入っていなかったのだ。この後、意外なことが待ち受けている。その数日後、ファラオの呪いが現実化したかのようにゴイネムは謎の溺死を遂げている。

そんなことはともかく、ザヒ博士の仮説には奇妙なところがいくつかある。彼は通称「女王の間」と呼ばれるところから天空に向かっている通気孔は、魂の通り道として用意されたものと考える。私もそれは同感だ。ただ、それが途中で止まっている点について、扉の向こうにまた地下に下降していくトンネルがあって、地下にあるはずの未発見の墓室まで続いている、と仮設している。これがおかしい。実はピラミッド内において、斜めのトンネルを作り出すことは大変に難しい。それが証拠に、大ピラミッド以降作られたピラミッドには地上から上へと昇っていくトンネルはない。もしも魂の通路として、地下の墓室まで貫通させたいなら、何故わざわざ途中まで斜めに上昇させる必要があるのか。真横に進んでいって直線的に下降させれば済む話だ。それに第一、魂の通路が天空へと突き抜けていないのはエジプト神話学的解釈としてもおかしい。この通気孔とされているものは、最初水平に進んでから斜めに上昇させている。明らかに斜めでなければならない理由があったはずだ。

番組では何度も通気孔の中をロボットが進んで、その奥に扉らしきものがあることを映し出していた。このトンネルは22㎝四方と小さいので、扉と云っても人間が出入りできるようなものでないことは明らかだ。まるでザヒ博士の発案でもあるかのように映し出されていたが、実際には個人の研究家ガンテンブリングが行った実験であったはずだ。それを完全に伏せている。しかもこの発見、15年も前の話なのだ。

もう一つ注目すべき発言をザヒ博士はしている。大ピラミッドの俗に「重量拡散の間」と呼ばれる屋根裏部屋の最上階にある「クフ」の落書きを取り上げ、ここに「クフ」の名前が記されているから「クフ王のピラミッド」であることに間違いはなく、それゆえに墓室やミイラもこのピラミッド内のどこかに未発見のまま眠っている、と結論付けたのだ。これがおかしい。実はこの「クフ」の記述に関しては偽造説なども根強く、種々奇妙な点があるのだが、それらに関しては一切触れなかった。一番の問題点は、同様の記述が天井裏の3階や4階にもあって、しかもそれらに記されているのは「クフ」ではなく「クヌムクフ」の方だと云うことである。もしも彼がこの落書きを当時の建設労働者のものであると云うなら「クヌムクフ」についてもきちんとした説明を加えなければならない。なぜなら「クヌムクフ」は同じ天井裏の部屋に記されている「王名表には載っていない」王名だからだ。

最上階の王名枠のみ取り上げるのでは「エジプト学の最高権威」が泣く。いや、彼でなくても良い。もし私の疑問に答えられる正統エジプト学者がいるなら、ぜひ説明してもらいたい。

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