手相上の誤解のもっとも大きなものの一つに「手相の変化」があります。古典的な手相の本の中には「手相は一生変わらない」と記してあるものもあります。近代の手相教科書でも「三大線は一生変わらない」として、頭脳線、生命線、感情線の三大線に関しては変わらない、と記してあるものもあります。もちろん、これらは正しくありません。手相はどの線であっても大いに変化するからです。ただ、変化しやすい手相と変化しにくい手相とがあることは事実です。また、変化しやすい年代、体質、職業などがあることも事実です。 男性・女性の別では、どちらかと云えば女性の方が変化しやすい傾向が見受けられます。また、一般的には十代後半から二十代半ばにかけて最も変化しやすい時期に当たるようです。ただ、これもその人によって一様ではなく、幼児期に変化の多い人や、体調を崩して以後に変化が多くなる場合、職業・環境の変化が手相の変化を招く例、結婚後に変化し始める例など様々です。共通して云えるのは、手相が大きく変化し始めると、やがてその人の運命も大きく変わり始めると云う事実です。つまり、手相の変化は実際の運命の変化にやや先行する傾向を持っているようです。
手相の変化と云うと、どうしても線自体の形の変化を想定しがちですが、必ずしもそのような状態にばかり変化する訳ではありません。線そのものが長くなるとか、短くなることも珍しくありません。時としては全く消え去ってしまうとか、新たに出現してくるとか、2本3本に分かれていくとか、島型を作るとか、途中切断されていくとか、太く力強くなるとか、細く弱々しく変わっていくとか、他の線と結びつくとか、細かな線が加わってくるとか…実にさまざまな変化を見せてくれるものなのです。 手相の変化をつぶさに観察したいなら、手型を採って保存しておくのが一番です。手形は朱肉や回転ローラーで取る方法もありますが、私自身は経験上スタンプインキが一番効率的であると考えています。ただ、スタンプインキは掌から落ちにくい欠点があり、比較的簡単に落ちる金色のスタンプインキが実占家にはお勧めです。そのほか、女性なら口紅を掌に塗る、と云う方法もあります。この場合あまりべったり塗ってしまうと、細かな線が埋まって写らなくなってしまいます。手型を細かな部分まで写す紙には、経験上から純白ロール紙が効果的です。半紙表面と云うのも比較的良好です。紙が薄過ぎても、厚過ぎても掌の中央部分が採れません。掌を押す時には、柔らかく厚手の下敷き用布が必要です。最初に名前や生年月日を記した後、手型を採るのが良いでしょう。私の手元には、こうして集めた数万枚の手型が保存されています。
ただ、これからの時代はデジカメや携帯のカメラで写す、と云う方法もあります。これなら掌は全く汚れません。もう一つ、コピー機で写し取る方法もあります。ただ、コピー機の場合は経験上あまり鮮明にはとれません。デジカメの場合もその可能性がありますが、実験していないので明確には云えません。昔の手相の本に写真撮影した手相が載せられていますが、どれもこれも不鮮明で実際にはかなりテクニックを要するのではないか、と云う気がしてなりません。結局どの方法にも欠点はあり、実際に肉眼観察しながら手相の変化を体得していくのが理想的ではあるのです。
実例サンプルとして、A・Tさん(男性・自営業・55歳)の16歳から55歳までの手相の変化を紹介しておきたいと思います。①が16歳の時の手相です。学校も行かず、引き篭もりとなって、目的を見失っていた時期です。掌全体に横線が多く、縦に上昇する線が弱々しく、障害線や生命線からの下降線が多数見受けられます。②が28歳の時の手相です。会社勤めも順調で、恋人が出来て恋愛に夢中になり、結婚を考えていたころの手相です。十代にはなかった運命線が出来上がりつつあります。結婚線が長くなり、同時に感情線からの下降線が増えてきたようです。③が47歳の時の手相です。仕事上で社会的にも成功し、収入が増え始める一方で、愛人問題が浮上し始めたころの手相です。太陽線や水星線が刻まれ、細かな線が消え、手相全体がすっきりとしてきました。ただし、結婚線は複雑化しています。そして④が55歳の時の手相です。49歳の時に離婚して、55歳で若い女性と再婚しています。事業に行き詰まり、経済的には窮地に立たされているようです。運命線や太陽線に変化が多く、その途中で途切れてしまっているようです。けれども水星線は力強くなっています。このように、手相は長期的にみると、驚くほど大きく変化していくものなのです。