最近、TVやネットで社会学者・古市憲寿氏の言動が話題になることが多い。或る意味で“若い世代”を代表した物言いのようにも感じるし、独自の理論や生活観の持ち主として興味深く感じることもある。但し、この人の発言で私がいつも気になるのは、他者への“理解力”というものがあまりにも乏しい、という点だ。自分は、このように感じ、このように生きていく、というのは大いに結構なことである。独自の視点を持ち、独自の意見を持ち、独自の生活観を持っている、それ自体は何ら批難しようと思わない。ただ彼は、いつの間にか或る種“若者世代の代弁者”ともなっている。その事実は客観視していなければならない。いくら、これは自分の考えで、人に押し付けるつもりはない、と言ったとしても「社会学者」という看板を背負っているのだ。その影響力というものはTV・雑誌に頻繁に出ている以上、逃れることは出来ない。そうであれば、多少は他者への“配慮”や“理解力”は必要なのだ。それが“公的な電波を使う”という発言なのだ。今回は「ワイドナショー」で、コンビニで現金払いをする人たちに対して「今どき現金を使うのって、頭悪いんじゃないですか」と言い放ったらしい。この人は、何故か「頭が悪い」という言い方を何に対しても使いたがる。まるで世の中すべて合理的に生きていけば問題ないのに、不合理な生き方をするから問題が生じる、とでも言いたげな発言が多い。彼は、世の中がスッキリしないのは、いつまでも前時代的なものを引き摺りながら生きているからだ、と言いたいのに違いない。ところがである。彼の思惑とは反対に、世の中というのは、どんなに時代が進んでも「完全合理主義」の世界は出現しないのだ。そういう風に出来ている。むしろ、生活の多くが合理的になればなるほど、そういうものとは真逆の“人情”や“情緒”や“雰囲気”や“癒し”や“恩義”や“礼節”を求める人が出て来る。そういうものに価値を置く人が多くなる。彼は、まだ、それに気付いていない。或いは気付いても、無視したいのかもしれない。けれども、やがて、彼にも、嫌でも、そういうものを無視できない時が来る。その時になって、自分が“不必要”に感じていたもの、“無意味”と蔑んでいたもの、“時代遅れ”と切り捨てていたものが、こんなに“価値のあるもの”だったと気付くに違いない。
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