その言葉に確かな根拠があるのかは微妙だが、経験的に確実視されている表現として「株価は実体経済に対し半年先を先行している」という定説がある。なぜ、半年先なのかは誰にもわからない。けれども実際、多くの株価が半年以上先の企業実態が見えているかのような動き方をしていることは事実である。日本の主要企業で構成される日経平均株価は、半年ほど前のアメリカ・サブプライム問題発覚以降ものの見事に低迷し続けた。右肩下がりとなった。
あれから約半年が経って、文字通り「株価が実体経済を映し出す時期」に入ろうとしている。つまり、これからの半年は日本国内の実体経済は、定説通りなら間違いなく低迷するのだ。その兆しはすでにある。ここ半年で大きく下がっている業種として、銀行、金融、不動産、建設、鉄鋼などがあげられる。つまりこれらの業種で働いている人たちにとって、特に厳しい季節がやって来たといえる。これらの業種は、オールドエコノミーとして2003年以降復活の代名詞となっていた業種だ。鉄鋼などは最低時から10倍もの株価となっていた。その躍進業種が大きく低迷し始めた。当然、2008年の日本の経済は失速する。これを切り替えるには、実体経済に先行する日経平均を押し上げるしかない。ところが困ったことに日本の株というのは、その約半分が外国人の取引で成り立っている。分かりやすく云うと外国人が買うと上がり、外国人が売ると下がる。もっと分かりやすく云うと、外国人達は福田康夫や小沢一郎では日本経済は上向かない、と見ているのだ。だから売る。早い話、取引の約半分が外国人なら、外国人から愛されない日本の首相は買われない。どうすれば愛され、買われるか…日本企業の大売り出しをすれば良い。そうすれば間違いなく、外国人達が買いに来て、日経平均が上がり、そうなれば実体経済も上向く。
ところが、現在の総理や総理候補は日本企業を守る側についている。売り出そうなどと云う気はさらさらない。だから外国人達も買おうとはしないのだ。それだけの話だ。
日本企業を売り出すなどというと、とんでもないことのように思う人がいるかもしれない。けれども、実際にはどの大企業も世界を相手に商売をしている。国際間での取引がなければ、大企業としての存続性すらない。国内だけを相手としている企業だけなら、日本経済は成り立たないのだ。
今回、エジプトへ行ってみて、その商魂の逞しさのようなものを大いに感じさせられた。たとえばアブシンベル神殿は、その外見を見るのに料金、内部に入るのに料金、音と光のショーを見るのに料金、朝日の上昇を見るのに料金…一つの遺跡だけで4回も料金を取るシステムとなっているのだ。ピラミッドも、王家の谷も、すべてそういう仕組みで、一つの遺跡でありながら何回も料金を取る。どの王墓だったか忘れたが、入口の所で段ボールの切れ端を渡された。訳も分からず貰ったら、それは「内部は暑いから、これを団扇の代わりにしろ」という意味で、親切なのかなと思ったら、出る時に、その団扇代を請求された。単なる段ボールの切れ端に正々堂々と料金を要求する。なんという商魂。
彼らのほとんどはイスラム教の信者で、古代エジプトの神々など露ほども信じてはいない。信じてはいないが観光を生業としている以上、それを最大限に活用し、とことん売りつける。早い話がエジプトは4500年前の遺産で食べている。先祖が残してくれた偉大なる神々の遺跡を売り物として、それとはまったく異なる信仰の中で生きていく。
タイやインドなども、遺跡を観光資源として外貨を稼いでいるところは共通しているが、先祖たちと同一の信仰を今も維持し続けている点に違いがある。エジプトの場合、古代エジプトの神々は今は100パーセント信じていないのだ。今はイスラム教一色である。それなのに平然と古代エジプトの神々を切り売りし続けている。しかし、血は争えないもので純粋なエジプト人は古代エジプト人達に、その表情は驚くほど似ている。それゆえ観光客たちは、遺跡に金を払うのだ。偉大なる神々と先祖は、ここでも子孫たちに無言で貢献しているのだ。
掲載日:2008年01月06日
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