日銀がデフレ対策として金融緩和方針を断言した。世界に後れを取ってきた日本だが、ここへきて政府も日銀も経済成長なくして“日本の未来はない”と云うことに、ようやく気付き始めたらしい。そう先進国の中でも少子高齢化が著しい日本では未来の子供達の為にも経済成長は必要不可欠なのだ。いつまでもデフレで立ち止まっていることは出来ない。
その対策に呼応するように、急遽円安が進み、株価が上がり始めた。もちろん一時的な呼び戻しはあるだろうが、両方共こう着状態が長く続いていただけに、一つのきっかけとして大きく動き出す可能性は出て来た。
ここ数年、日本は円高が続き、株安が続き、地価下落が続いた。一時期、停まったかに見えたデフレは収まらず、ドルに対してだけでなく、すべての通過に対しての円高にも拍車が掛っていた。「避難通貨」とも呼ばれる円は、他の通貨が下落すると必然的に買われる。近年は欧米圏で経済や通貨の問題が多いので、どうしても円は買われがちだった。ただ日銀が金融緩和を推し進めてデフレを阻止すると宣言したことで、世界の投機資金がいったん円から離れ始める可能性が高い。そうなれば一気に円安方向へと動き出す可能性は乏しいとしても、徐々に円安へと振れていく可能性は大いにあるのだ。円の適正な値に関しては様々な説があり、50円半ばという超円高説から、130円前半と云う超円安説まであって、どの程度が適正なのか私には解からない。ただ円安に傾いてくれた方が輸出産業が多い日本経済全体にとって貢献度が大きいことは間違いがない。円安に傾くと株価も上昇することは外国人投資家の多くがドル換算で株価を捉えるからである。外国人旅行者にとっても、旅費が安くなるから日本に来やすくなって、お土産なども沢山買い易くなることは言うまでもない。観光地の消費の何割かは間違いなく外国人観光客なのだから、そういう意味でも円役メリットは大きいのだ。お土産ばかりではなく、もっと大きな買い物、不動産にしても円安は有利だ。もっとも投資目的で土地・マンションを買いあさる輩が出て来るかもしれないが、極端でない限りデフレ阻止策としては有効と言えるだろう。とにかく、どんなに税収比率を増やしても、経済が縮小していっては国の借金は返せず、デフレからの脱却も出来ない。
世界経済が混とんとしている今日、欧米からの経済変動の余波を受けやすい国と云われている日本は少しでも独自の経済成長や経済戦略を身に着けていかなければアジア諸国の新興国に次々と追い抜かれていってしまう。別に経済が追い抜かれても、ブータンのように経済格差目立たず幸せ基準が確立されていれば問題ないが、今の日本社会に同じような価値観をそのままあてはめることは難しく、いつの間にか後戻りできない経済格差まで生まれて、環境や教育の原点から作り直さなければ、とても価値観の統一など出来そうもない。よく、お金で幸せは買えないというが、確かにその通りではあるのだが、それは似たような環境・経済状況の中での正論で、あまりの格差歴然としている状況下では、少なくともいくつかの幸せがお金で買えることも事実だ。ぎりぎりの年金生活で生きながらえている人々が居て、派遣やアルバイトやパート収入ぎりぎりで暮らしている若者が居て、その一方でセレブ生活を謳歌している一部の恵まれた富裕層がいる。昔、日本の九割の人々が「中流」と名乗っていた時代は彼方へと消えた。日本国の舵取りの何かが間違っていたのではないのか、少なくとも国民の七割が「中流」と言い切れる時代へ戻すことが急務のように思われる。
そういう意味でも、何かが動き始める予感を感じさせる日銀の宣言とマーケットの反応であった。円安方向へと徐々に動き出せば、必ず株価も上昇し、地価も上昇し、デフレも食い止められる。ただ時として首相や大臣の迂闊な発言が経済の足を引っ張り易いのがこの国の特徴だ。どうか、それだけはないよう願ってやまない。
円安に関しては個人的に苦い思い出がある。あれはもう16年前くらいだったと思うが、一時的に円安が急速に進んだことがあった。その当時、私は珍しく景気が良くて毎月かなりの金額を預金に回せる余裕があった。そこで当時騒がれ出した外貨預金という手法を試みようとしたのだ。そう思って一度銀行へ行ったのだが、担当者はあまり良い反応を示さなかった。多分、当時の外貨預金にしては額が少な過ぎたのだろう。彼の態度を見て私はちゅうちょしてしまった。結局、そのまま家へ友だったのだが、その3日後に円安は一気に7円も進むという特異な現象が起こった。あの時、彼の態度など気にすることなく外貨預金をしていれば良かったのだが、極端に円安になったところで後れを取ってはいけない、と即座に外貨預金を行った。今度は担当者の説明など聴かなかった。ところが、そのあと2円ほど円安は進んだが、要するにそこまでだった。あまりに急速に円安へと振れた反動で、今度は円高へと徐々に動き出したのだ。私の記憶違いでなければ1ドル=147円で行った外貨預金はじわじわと円高へと修正されていき、その3年後には105円台まで円高方向へ振れていったのだ。結局、外貨預金は散々で三分の二以下となっての払い戻しを受けた。あれ以来、一挙に7円も動くことはなくなったが、3~4円なら稀に動くことはある。今ならFX投資をしている人達も多いので、一気に動くと大儲けしたり、大損したりする人も出て来るだろう。宝くじは神頼みだが外貨や株価や不動産投資も根本は皆同じで、タイミングと勘と運が、すべてを支配している。
掲載日:2012年03月04日
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