一人の絵本作家が、新聞でコラムの連載を持っていた。その女性は自分が卵巣がんを患い、余命いくばくもないことを感じ取っていた。まだ51歳だった。夫は弁護士だったが、家庭的なことの多くは自分が行ってきた。ふとカレンダーを見ると、ニューヨーク・タイムズに毎回掲載するコラムの原稿締め切り日が「バレンタインディー」に重なることを知った。自分の死後、ひとり残される夫の姿がぼんやりと浮かんだ。彼女は次のコラムに「結婚相手募集」と綴った。妻を亡くした夫のために、新たなパートナーを“バレンタインディーのプレゼント”として募集してあげようと思ったのだ。このコラムを読む人の中から、夫・ジェイソンに相応しい相手が名乗り出てきてほしい…彼女は心からそう願った。実際、ニューヨーク・タイムズには夫へのサプライズである「結婚相手募集」のコラムが載った。最期のコラムとなった。彼女は「私が心から望むのは、誰か彼にふさわしい人がこれを読んで、ジェイソンに出逢い、二人の新しいラブストーリーが始まること」それが掲載されて間もなく、彼女は急激に弱った。そして3月上旬になって自宅で静かに亡くなった。エイミー・クラウス・ローゼンタールさん、享年51歳。夫ジェイソンは、コラムのことを担当編集者から、葬儀の席で聞くまで知らなかった。そして“死後の出逢い”までプレゼントしようとした妻に感謝したが、今はその気にはなれない…とうなだれた。世界の片隅で、さまざまな人たちが“愛の別れ”を経験する。そして、どんなに努力しても、その“代役”は誰も果たすことが出来ない。
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