「売れない漫画家」から「警察官」へと転身した人物の話が掲載されていた。現在、千葉県警成田署に勤務する山崎直樹氏(38歳)を扱った記事だ。彼は、幼い頃から漫画を描くのが好きで、とりあえず入った専門学校卒業後、進路に迷ったあげく、思い切って“漫画の新人各賞”に応募した。その結果、幸運にも『週刊ビッグコミックスピリッツ』の新人賞を獲得する。そこで、プロになるべく工場勤務のアルバイトをしながら、さまざまなジャンルの作品を編集部に持ち込んだ。ところが、新人賞は取れたのだが、なかなか雑誌掲載とまではゆかなかった。どんな作品を描いても、担当者からダメ出しをされるのだ。だんだん何を描けば良いのかわからなくなった。絵自体は上達する。けれどもストーリーというのは、描けば上手くなるとは限らない。編集者にダメ出しをされていくうちに、“自分が作る物語”というよりも、編集者に“ダメ出しされない物語”を作ろうとするように変わった。そうして、ようやく5年が経って『ピンクの天使』という読みきりでデビューした。けれども何の反応もなかった。第一、自分の作品ではあったが“自分のモノ”という気がしなかった。編集者に言われるがままのストーリーで書いたら掲載されただけだからだ。夢にまで見た“雑誌掲載”だったが、それでプツンと糸が切れた。何の反応もないということは、誰も自分の漫画など求めていない、ということだと悟った。そうしたら、憑き物が落ちたように漫画を止められた。そうして、実家に戻り、地味でも“世の中に役立つ”人間になろうと誓った。そうして警察官採用の面接を恐る恐る受けてみた。すると、意外なほどスムーズに採用された。警察官という職業なのに、元バンドマンとかバックパッカーとかがいた。自分も“仲間”に加われるような気がした。そうして仕事について間もなく、万引き事件があり、その事件の現場図面を描いた。その“現場図面”の的確さが上司の目に留まった。こうして、彼はやがて本部の“広報県民課”というところに回され、ホームページの作成やポスター作りを任されるように変わった。思わぬ形で“得意の絵”が活きて来たのだ。2018年からは成田署に移り、新人の採用面接官を兼ねている。自分が、悩み苦しんだ“職業選択”を若い人たちと一緒に考え、寄り添ったアドバイスができる。ここでも、“経験”という才能が活きているのだ。
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