人は窮地に陥って解決の糸口が見いだせないとき「もう少しだけでも良いから…」という願いを“神・仏に対して”抱きがちです。普段、信仰心など持たない人であっても、どうしようもない窮地に追い込まれ、解決の手段が見いだせないとき、人は無意識に“祈るような気持”を抱くものです。けれども多くの場合、その願いが聞き入れられることはなく、がっくり肩を落とすケースが多いものです。果たして、神仏は存在していなかったのでしょうか。どんなに訴えても、どんなに願っても、神仏は“黙ったまま”です。直接的には、何もしてくれません。人はそういう時、そこに「運命」を見るのです。神仏は見えないけれど、巨大な姿で行く手に立ちはだかっている「運命」を見るのです。人が本当に「運命」を受け入れるのは、そういう時なのです。つまり、神仏さえ見えないときに、嫌いなのに、どうしようもなく嫌いなのに、そこに黙って待っているのは、何となく知っていた、見たこともないのに感じて知っていた「運命」の姿なのです。そうして、人は「運命」と向き合い、しみじみと向き合い、丁度、犯罪者が無言で護送車に乗り込むように「運命」と肩を並べるのです。人はこうして“生まれる”ということの不思議さを知るのです。人間の力ではどうすることもできない「運命」を見せつけられ、“生きる”ということを知るのです。生きていくことの“哀しさ”を知るのです。生きていくことの“逞しさ”を知るのです。「運命」こそ、もしかしたら“神・仏”そのものの姿なのかもしれません。
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