さいたま市の教職員住宅で殺害・遺棄された進藤遼佑くん(9歳)の事件は、同居する義理の父親である進藤悠介(32歳)の逮捕・自供によって一応の決着を見た。殺害動機は「本当の父親ではない」と言われたことらしい。事実を事実として述べただけなのだが、32歳の無職の父には“我慢できない言葉”だったのかもしれない。近年、子連れでの離婚、再婚が増えている。子連れでの「再婚」には当然のことながら“義理の父”或いは“義理の母”としての“難しい問題”が待っている。こればかりはITがどんなに進んでも簡単には解決できない。今回の容疑者の場合、無職で一日中家の中に居て、義理の息子との接触時間が多かったということも、複雑な感情を育てる一因ではあった。実の親子でも、“父親”と“息子”が二人だけで一日中顔を突き合わせていたら、問題が生じやすい。ましてや母親より10歳も年下で見た目的にも“お兄さん”的風貌の人物が「父親」に見えないのは当然だった。経緯的にみると、昨年12月から同棲を始めて、今年3月になって正式に「籍」を入れたらしい。なぜか“妻”の方の籍に入っている。もしかすると“無職の父親”ではいろいろ都合が悪いので、妻側に入った、ということかもしれない。住居的にも、妻が元々居住していた教職員住宅そのままで移動していない。そういう意味でも、息子からしてみれば“家に転がり込んできたお兄さん”であって「本当のお父さん」ではないと思うのは、ごく自然な流れだった。けれども、新米の父親は“父親らしく”自分の息子を注意をする。その時、息子の眼が妙に反抗的だった。言葉ではなく“眼”が反抗的だったのだ。一瞬、父親はうろたえ、より強く注意する。「なんでいうことを聴かないんだ。俺の言うことが聴けないのか」しばらく、二人は互いを見合った。「あんたは本当のお父さんじゃない」噛みしめるように息子は言い、背中を向けようとした。父親はカッとなった。気付けば、息子を絞め殺していたのだ。したがって、容疑者が“悪い奴”なのかと言えば、もちろん“悪い”のだが“根っからの悪い奴”なのではない。ごく普通の“感情に走りやすい奴”であり“プライドの高い奴”なだけである。そうして“そういう奴”は世間に沢山いて、シングルマザーと恋愛・再婚している男性にもたくさんいる。したがって、今回の事件は、今後増えていく可能性の極めて強い“典型”にすぎない。
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