現代の四柱推命は、実に多くの流派(門派)・研究者によるさまざまな観方・判断の仕方に彩られています。けれども、そのどの流儀に属するにしろ、その源となっているのは中国の徐子平・萬民英・劉伯温など宋代~明代へと続く「四柱(子平)推命の確立者たち」の業績の上に立つものであることは否めません。

その四柱推命の成立過程の中で、採用されてきたモノの一つに「神殺(しんさつ)」と呼ばれる星達があります。現代の四柱推命においては、それらをまったく用いない流派もありますが、多くの流派では採用し続けています。ただ採用している流派でも、どの「神殺」を用いるか、どの表出法を用いるか…に関しては、それぞれに異なっているのが現状のようです。

すでに述べてきたことも含め推測すると、中国における四柱(子平)推命という占術は、下記に示したような研究者や編纂された書籍を経て、確立されていったと考えられます。

古代ギリシャの天文学者でもあったプトレマイオス著『テトラビブロス(四部書=ラテン語)』
中国における「四柱(子平)推命」の原初段階をまとめた李虚中著『命書』
中国における「テトラビブロス」の翻訳書である可能性が強い唐代『(都利)聿斯四門経』
単なる翻訳書からは脱皮しようとしていたらしい張果老著『果老星宗』
翻訳書ではあったが後の「子平原理」の基となった徐子平著?『徐氏続聿斯歌』
中国独自の北斗七星に由来する占星術を体系化させた陳希夷著『紫微斗数全書』
「命書」を基礎とし中国色を前面に押し出した徐子平著『三命消息賦』
「果老星宗」と「紫微斗数」を合体させようとした鄭希誠著『星命溯源』
「果老星宗」と「紫微斗数」と「子平」の三つを合体させた水中龍著『星平会海』
あらゆる中国系の占星術と推命術を総括的に述べた萬民英著『星学大成』

もちろん、このように系統立った形や順序で研究・編纂・発刊されたわけではありませんが、こういった時代的な流れの中で「占術として確立された」ことは間違いないだろうと思われます。その証拠とも言うべきものとして、各占術に共通の「神殺」が使われているのです。

そこで、「紫微斗数」「星平会海」「四柱推命」に共通した「神殺」を、まとめてみたいと思います。

星平会海による出生図

紫微斗数による出生図と四柱推命による出生命式

ここで用いられる「神殺」には、占術によって、或いは流派によって微妙に名称や表出法が異なるモノもあるのですが、ここでは拘泥せず、要するに共通している「神殺」という点だけに注目して、その代表的なものを記していきます。

神殺表出方法具体的な意味と作用
感池(かんち)(三合の原理から表出)酒食に溺れる。男女関係でトラブルを生じやすい。
駅馬(えきば)(三合の原理から表出)移動・旅行運が強い。生地を遠く離れて成功する。
華蓋(かがい)(三合の原理から表出)名誉運を持っている。複雑な家庭環境に縁がある。
文昌(もんしょう)(干から支を見て表出)学術方面で伸びる。試験運が良い。才能発揮の相。
貴人(きじん)(干から支を見て表出)目上からの引き立て運がある。良い師に恵まれる。
羊刃(ようじん)(干から支を見て表出)突発事故や怪我に注意。激しい性質の持ち主となる。
天空(てんくう)(支から支を見て表出)心の空虚さが付いて回る。精神的に満たされない。
禄存(ろくぞん)(干から支を見て表出)金運・財運に恵まれる。職務上の役得にあずかる。
天耗(てんもう)(支から支を見て表出)不意の出費・散財が多い。労働や苦労が役立たない。
孤辰(こしん)(三合の原理から表出)親・兄弟などの縁が薄い。対人面では孤立しやすい。
寡宿(かしゅく)(三合の原理から表出)結婚で幸福を掴めない。配偶者に先立たれやすい。

「星平会海」でも「紫微斗数」でも「四柱推命」でも、数百年間にわたって、これらの虚星(実在しない星)が使用されてきました。それぞれが、明らかに「異なった占術」であるのに、明らかに「異なった占術構造を持っている」のに、誰一人それを矛盾とは感じず、疑問が呈されることもありません。逆な言い方をすれば、これらの神殺には、三占術が共有し合うだけの的確な作用が存在していたと云えるのでしょうか。