人相学上の「あご」には、口唇の真下にある「頤(あご)」と、側面から見なければ分からない「顎(あぎと)」とがあります。

横に張る顎真正面から顎を観た時、もっとも目立つのが左右に張り出している顎です。一般的には戸外労働をする男性に比較的多く見受けられますが、戸外に出ることの少ない女性にも見ることがあります。俗に「欲の皮が突っ張っている」とか「意地を張る」と云う表現がありますが、正に、この顎相の形を捉えての表現かと思われます。実際、このような顎を持っている場合、性格的に意地っ張りな面は見受けられますし、物質欲の強い傾向も窺われます。ただ、男女とも粘り強くて、目的意識が強く、努力家が多いものです。他の相との関係いかんでは粗暴さが目立つこともあります。
縦に張る顎真正面から顎を観た時には目立たなくても、側面から見た時に下方へと顎骨の張り出しが目立つ相です。このような顎を持っていると、顔全体がやや細長く見えるものです。日本人には比較的少なく、欧米の女優などにしばしば見受けられます。愛すると云うことに対して、一途直向きな人の相で、愛する異性を理想化しやすく、自分自身の中で勝手に偶像化しやすい傾向も見受けられます。また、官能的な体質を持っていて、性的な悦びを得るための努力を常に惜しまないのも、その著しい特徴と云えます。異性相手の仕事に向き、芸術・芸能の分野では才能を発揮できます。
未発達の顎顔を斜め側面から見た時、通常は確認される顎骨が、ほとんどないに等しいほど発達していないと、のっぺりした印象の横顔に見えます。顎骨は忘恩骨(ぼうおんこつ)とも呼ばれて、あまりに未発達だと恩義に乏しい傾向が目立ちます。自立心や独立心に欠け、意志薄弱で努力を嫌い、その時々の気分や感情に左右された人生を歩むものです。常に誰かに頼らないと生きていけません。恋愛は気分や感情を最優先とするため長続きせず、相手が変わりやすいものです。仕事も我慢と云うことを知らないので一つの職場にとどまることが出来ずに、転々とする人生を歩みがちです。
形良い顎顔を斜め側面から見た時、耳の付け根から下頤にかけてのラインが美しく見えるのは「顎が形良い」からです。顎は時に害骨(がいこつ)とも呼ばれ、未発達もいけないのですが、目立ち過ぎても良い相とは言えません。適度な発達と、それを目立たせない肉付きとが必要なのです。女性でこの骨が目立つと、意地っ張りなだけでなく、私生活上の苦労や災いが多く、人を素直に信じ切れないものです。形良い顎は私生活に恵まれる相で、愛情生活に落ち着きがあり、経済的にも波乱が少ないようです。適度な意志や独立心を持ち、周囲から信頼されて人生を歩めるものです。

頬の位置や範囲は人によって異なり、的確に捉え難いところが見受けられます。広義の頬は、額や頤の上下を省いた耳・鼻・目を除く「顔の中間部位」ですが、一般的には目の下、鼻の脇に来る頬骨を指すのが普通で、ここでもそのような意味合いで解説します。

側面に張る頬頬骨が側面に強く張り出すと、顔の印象として「強さ」が強調されるものです。女性のプロスポーツ界で活躍している方の多くは、この側面に張る頬骨を持っているものです。一見、可愛らしい顔立ちでも、頬が側面に強く張り出していると、忍耐強く、根性があり、決して弱音を吐かず、何事も主導的に物事を推し進めていくものです。頬は「世間に対しての本人の力量」が示されるところと云われ、それが側面に向かっているのは、世間に対する抵抗力の強い相となります。したがって、自分が家族を守っていかなければ…と云う意識の強い女性の頬は側面に発達するのです。
前方に張る頬古典的な相書では頬は「顴骨(かんこつ)」と呼ばれ、前方に張り出している頬は「世間に対する攻撃力の強い相」として、押し出しが強く、権力志向が強い傾向が見受けられます。この場合、顴骨そのものが目立つのは強引に相手を従わせようとし、肉付きが良くて骨が目立たなければソフトに相手を従わせようとします。骨そのものが目立つのは格闘家、ブローカー、暴力団組長などに多く、肉付き良くて目立たないのは政治家、大企業のトップ、宗教の開祖などに多いものです。女性でも種々な組織を傘下に持つ企業のトップなどは、大きく張り出し権力を得ているものです。
そげた頬肉ややそげた感じに見える頬の持ち主と云うのは少なくありません。元々が色白で細面の顔立ちの場合、普段から頬がそげた感じになりやすいものです。こういう人は物事に対して受け身で、自分から主導的に働きかけると云うことが少ないものです。ただし、頬肉は乏しいけれど、頬骨は張っている場合は逆で、利己主義的行動が目立ちます。誰にも従いません。全体的に弱々しい印象を与えるそげた頬は、世間に自分から馴染んでいこうとはしないし、対人面では妙に憶病なものです。また、性格的に明るさと積極性に欠け、なるべく目立たず生きていこうとするものです。
豊かな頬肉頬骨はほとんど目立たないのに、頬の肉付きが良く、大きく豊かな頬として印象に残る人がいます。この頬の肉付きと云うのは、太っているとか、痩せているとかは、関係がないものです。実質的には、頬肉は上下に分かれるもので、その上部は顴骨を包み込むように肉がついた形であり、その下部は顴骨がやや下方にずれ、小鼻の左右まで肉がついた形です。後者は人気運の豊かな相で、特に大衆一般の人気を必要とする仕事の場合、顴骨下部に肉付きが豊かであれば、人気や支持を集めて成功することは間違いありません。この部分の頬肉が急にそげれば人気は急落します。