大昔、王侯貴族は好んで宝石を身に付けた。その典型がツタンカーメン像だ。彼らは、もちろん、宝石に光り輝く財宝としての価値を見出していたからだが、それだけで常に身に付けていたわけではない。古代において、宝石は“魔力を秘めた石”として、心身を守ってくれると信じられたからでもある。古代エジプトやペルシャでは青い輝きを放つラピスラズリが特に“霊石”として重要視された。また古代マヤ王国ではヒスイの輝きが“魔力”を発揮し、王を守護すると信じられた。インカローズの朱色の輝きは、インカ女王の“愛の守り神”として珍重された。このように、古代の人々は、自分を守ってくれる“精霊の石”として宝石を愛したのだ。昨日、一組の男女が名古屋で逮捕された。宝石を盗んだ容疑である。それも仕事として、ハウスクリーニングに入った家の中から、指輪やイヤリングなど合計27点を盗んだ容疑が掛けられ、男性の方は容疑を認めている。交際中だった23歳の女性の方は認めていない。78歳の老女が一人で暮らす家には宝石箱があり、その中に沢山の宝石があった。もしかするとアルバイトの女性は78歳の老女よりも、23歳の自分の方がこれらの宝石を身に付けるのにふさわしい、と思ったのかもしれない。もし、彼女が、ただの一点だけを盗んだのなら、或いは老女は気付かずにいてくれたかもしれない。けれども、宝石箱の中身ほとんどを盗んでしまった。これでは老女も見落とすはずがない。宝石は長く身に付けていると“念”が宿るのだ。そういう意味でも、あまり親子・親友同士でも譲り渡すのは、運命学的に賛成できない場合もある。つまり、宝石は“人を選ぶ”。盗んだ女性は、自分の方がこれらの宝石を身に付けるのにふさわしいと思ったかもしれないが、宝石の方は“老女の身体の一部”でありたかったのだ。
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