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今日の迷言・余言・禁言

未来と運命に対するヒントがいっぱい


時代の寵児を作った『人間の証明』という小説


作家の森村誠一氏(90歳)が逝った。作家としては晩年までずっと書き続けていて、老人性うつ病になって以降も書くことを辞めなかった。彼は元々ホテルマンから出発している。ホテルマンになったが、生涯サラリーマンとして勤め続けていく気は無くて、早くから“作家生活”を志向して小説を書き続けていた。わたしは、その売れない時代にたまたま書店で彼の本を取り、なんとなく「この人は将来、大物作家になっていくのではないか」という予感を持った。小説家の文章としては、少し“きちんとしすぎていて”あまり“文学的な表現や描写”が見受けられない。そのせいか、若い頃の彼は“売れない作家”であった。いまでいう“作家とホテルマンの二刀流”生活を長く続けた。そんなに売れなくても、どの出版社だったか忘れたが、その一つの出版社の社長が彼を買っていて、小説を書くごと出し続けてくれていたからだ。その彼を一躍有名にしたのは『人間の証明』という小説だった。当時、流行っていた“社会派推理小説”というやつだが、彼をメジャーに押し上げたのは、あの頃、若手事業家として勢いに乗っていた角川春樹氏であった。つまり、彼は“売れない出版社”から“角川書店”に引き抜かれた格好だった。そうして、この小説は薬師丸ひろ子氏を主役として映画化され“大ヒット”となった。それまで“売れない作家”だった森村誠一氏は一躍“時の人”となり、華やかな流行作家となった。形として整っている彼の小説は、次々とTVドラマ化などもされたが、小説そのものは『人間の証明』以降はそれほど売れていない。一つには、文章そのものは昔のままで情緒的描写に乏しいのだ。その点は同時期に活躍していた松本清張氏などとは根本的に異なる。松本氏の小説には、その表現自体に情緒性がある。長らくホテルマンとして几帳面な暮らし方をしていたに違いない森村氏に情緒性を求めるのは酷な要求かも知れなかった。それにしても、初期の二刀流生活を支えて本を出し続けてくれた出版社社長には「観る眼があった」ということになる。人の才能は、こうした微妙なつながりの中で発揮されていくことが多い。余程の天才でない限り、その才能を「見出してくれる人物」と出逢うことが成功の鍵となるのだ。
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