『週刊現代』で歌人・石川啄木の“もう一つの顔”を描写する『啄木・ローマ字日記』からの人物評が掲載されている。その中で石川啄木は“清貧の中で死んだ不遇の天才”ではなく、“妻子を養うこともせず借金して遊郭に遊んだゲス男”であるとこき下ろしている。う~ん、手厳しい。確かに『ローマ字日記』のストーリーだけ追えば、その通りの日常が“浮かび上がって”来るのは事実だ。要するに2か月余りの日記内容は、ローマ字でつづられている日々の出来事で、啄木自身は出版されることになろうなどとは夢にも思わず、書き記していたものだ。なぜ、ローマ字で記したのかと言えば、妻に内容を悟られたくなかったからだと、彼自身が述べている。しかも、本来は遺品として“燃やしてほしい”と妻に依頼していた日記なのだ。それがどうして出版となったのか奇妙だが、この日記で興味深いのは、彼が江戸時代の“官能小説”をそのままノートに筆写していると書かれていることだ。しかもローマ字で筆写している。この“官能小説”は、ひたすらsexに明け暮れる内容で、最後は“乱交”となって終わるという仕立てになっている。それを3時間もローマ字で筆写しているのだ。なぜ、そんなことをしたのか、週刊誌上では“エロいゲス男だからだ”というような捉え方だが、私は異なる。3時間もローマ字で筆写するのは、その表現や内容を的確に把握したいからで、当時、作家を目指していた啄木にとっては“官能小説家”となって人気を得るための“勉強”のためではなかったか。遊郭に通ったのも、実際にさまざまな性愛を試すための手段ではなかったかと思えるのだ。なぜなら、その日記によれば、彼は“フィストファック”など特殊な性行為を試みているからだ。実践せず“官能描写は書けない”と思った彼は、ひたすら遊郭で“実体験”を積もうとしていたのだ。だからこそ「妻を愛している…だから読ませたくない」と記してもいるのだ。実際、この当時、彼は次々と小説を書いたが、どの出版社も取り合ってくれなかった。彼は仕方がなく、自分への慰めとして「短歌」も書いた。彼にとって、短歌は“仕事”ではなかった。同時に“官能小説”であれば“原稿料”を得られるかもしれない。そういう思いからの“エロくない筆写”だったのだ。
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