よく「あの人は才能がある」とか「才能がない」とか言う。確かに、客観的にみて“才能の有る無し”はある。けれども、それだけで社会的に成功したり、社会的に不遇だったりするかと言えば、そうとも言えない。世の中に“才能がある人”は意外なほどたくさんいるからだ。けれども、それらの人達がことごとく成功・出世しているかと言えば、そうではない。中には“悲惨な人生”を歩む人や“不遇なまま”世に埋もれていく人も多い。それらの違いは何だろう。47年間の歌手生活を終え、昨日自らのブログでファンに感謝を綴った森昌子氏の言葉には、そのヒントのようなものがあった。彼女は自分が「時代と作品に恵まれ」その結果として、恵まれた歌手人生を歩み続けることが出来たと述べているのだ。これは大変に重要な視点で、彼女の場合は“歌手”という職業なので「時代と作品」と述べたが、これを一般の方達にも当てはまるような表現に変えれば「時代と環境」が相応しい。つまり、どんなに才能があっても、時代や環境に恵まれていなければ、その人は自分の才能を発揮することが出来ない。仮に発揮していたとしても、世間はそれを受け入れたり認めたりはしない。多くの人は社会的に成功・出世していく人を「才能がある」と評価する。中には「運が良かったんだな」としか思えないような成功者もいる。それでも「運も才能の内」というような捉え方もある。だから成功・出世してしまえば、世間というのは“評価せざるを得ない”ようなところもある。もちろん、子供時代から、群を抜いて才能を発揮する人もいるが、まったく逆のパターンもある。そういう点から考えても、ここでいう才能は必ずしも学習能力ではない。画家のゴッホは、生前2枚しか絵が売れなかったというが、弟のテオが生活を支えていた。多分、画商でもあったテオは兄の“たぐいまれなる才能”を見抜いていたに違いない。けれども、当時の世間はゴッホの絵を認めてはくれなかったのだ。それでも、ゴッホが“好きな絵”を描くことだけで生活できたのは「弟」という環境を得ていたからだ。現在、何十億とか何百億とかの値段がつくゴッホの絵も、その当時は誰も相手にしていなかった。「時代」と「環境」は、才能を引き出す陰の立役者なのだ。
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