昨年11月、両親を溺死させたとして一人の女性が逮捕され、先頃、懲役4年の判決を受けた。実際には親子三人で利根川に飛び込み、無理心中しようとしたのだが、自分だけ“生き残ってしまった”結果の判決だった。母親が81歳で認知症とパーキンソン病を患い、10年以上も献身的に介護し続けてきた娘の決断だった。先に言い出したのは父親の方で、それまで新聞配達の仕事を真面目に続けてきたが体調を崩し、仕事ができなくなり、生活に行き詰った。47歳の娘は父親の“提案”に即応じた。もう疲れていた。死の直前、生活保護を受けようと市役所に出向いたが、生活事情をしつこく問われて、申請は出来たのだが“惨めさ”に我慢ができなくなった。そう何度も法廷で「惨め」という言葉を使った。彼女を“死に駆り立てた”のは、その気持ちが一番だった。車で飛び込む直前、父親が「あっちゃん、ごめん」と背中で言っていたという。多分、父親も“惨め”な気持ちでいっぱいだったのだろう。彼女に“間違い”があるとすれば、それは「惨め」なのは彼女だけではない、本当は“みんな惨め”で、辛くて、悔しくて、明日が見えないんだけど、でも、だけど、どこかで“ちょっとだけ楽しいこと”もあるから、もしかしたら、明日は“もうちょっとだけ良いこと”あるかもしれないから、生きている。半透明な過去を引き摺り、本当はだれでも「惨め」をさらしながら、素知らぬ顔で、生きている。
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