アメリカで、一つの「アート」が問題になっている。女優でコメディアンでもあるキャシー・グリフィン氏が、“性的表現”を得意とするカメラマンのタイラー・シールズ氏の求めに応じて、人形の頭部をわしづかみにしている写真を掲載した。ただの人形ではない。トランプ大統領の人形頭部なのだ。彼女の“アート写真”にはメッセージが添えられている。「トランプ大統領の発言は暴力を誘発する。キャシーも同じことをしたのか」これは、カメラマン・シールズ氏が写真に添えた言葉(キャッチ・コピー)だ。この人形頭部は、この撮影のため製作されたもので、首を切られた形で、顔面血だらけの形相でリアルに作られている。その頭部、髪をわしづかみにして自分の顔に並べるような意図のもと、グリフィン氏が真正面をにらみつけている。どうしても思い出す二つの映像がある。その一つは、かつてイラクでフセイン大統領の銅像が庶民たちに踏みつぶされ破壊されていく姿。もう一つは、イスラム国で、捕まった人質たちが“断首される”直前の映像。この二つの映像が、重なり合うような形で私たちに蘇る。けっして気持ちの良いアートではない。実際、私と同じような印象を持った人達がアメリカにも多かったようだ。避難が続出し、グリフィン氏は謝罪コメントを出した。だが、シールズ氏の方は「称賛も拒絶も理解している」と意に介さない。確かに「アートな表現」であることは間違いがない。ただ、現実が「アート」を超えてきている時代、あまりにも過激な表現は、ブラック・ユーモアと笑って過ごすには少し無理がありそうな気がする。
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