或る時、気が付いたら“底なし沼”のような状況に追い込まれていた、という境地の時が人生にはある。そんなはずはないと、もがけばもがくほど全身が引きずり込まれていくような恐怖がじわじわと襲ってくる。そういう時、人は自分自身で何とかしなければと焦りながらも、本能的に“救いの手”を求めようとする。ところが、周囲が見えないとか、周囲に声が届かないとか、身動きができないとか、何らかの理由から“絶望的な状況”にある場合、初めて人は神仏にすがる。それ以外にないからだ。「神・仏」は救ってくれるだろうか。実は、そういう時、何よりも力となるのは神仏ではない。自分自身なのだ。自分自身の「潜在意識」なのだ。“本能”と言い換えても良いし、“潜在脳”や“魂魄”と呼ぶのがふさわしいのかもしれない。とにかく、そういう“深い部分の自分自身”なのだ。なぜなら、この“深い部分の自分自身”が、すべてを知っているからだ。人間のようにではなく、コンピュータのように知っているからだ。だから、この部分に働きかけると“本当の答え”とか、“とりあえずの対処法”とか、“抜本的な解決法”とか、“救済システム”とかを引き出すことができる。緊急時には緊急時のような対処法を用意している。ただここは普段は“開かずの間”で、通常の意識からは遮断されている。どうしようもなくなった時にだけ、或いは緊急時にだけ、開くシステムになっている。われわれが“必死”になることの大切さ、“無我夢中”になることの大切さ、“一心不乱”になることの大切さは、実はそういう状態の時、この扉が往々にして無意識に“開く”よう設計されているからだ。だから、俗にいう「祈り」も「願い」も“我を忘れる”ほどの境地となって初めて通ずるのだ。多くの場合、偶然に見える“救いの手”の出現は「潜在意識」から差し伸べられた“自分自身の手”そのものなのである。
奇妙なことに、年末が近づいてくると、人は「過去」を振り返る。それも去年とか一昨年の“身近な過去”ではなくて、ずっと遠い「子供時代の過去」についてだ。年末以外には“忘れている”のに、 続きを読む
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